針尾送信所

針尾送信所の概要

針尾送信所（はりおそうしんじょ）は、1922年に長崎県佐世保市針尾に建設された無線送信所であり、大日本帝国海軍によるものです。この施設は、第二次世界大戦後も1997年まで海上自衛隊や海上保安庁の無線通信の機能を持ち続けていました。現在は、国内で大正時代に建設された塔状のコンクリート構造物として唯一現存し、最も高い建物でもあります。このため、国の重要文化財に指定されており、地元では「針尾の無線塔」として親しまれています。

タワーの構成

針尾送信所には、3本の電波塔が立っています。これらの塔は、それぞれ1号塔、2号塔、3号塔と呼ばれ、1号塔と2号塔は共に高さ135メートル、3号塔は137メートルです。基部は直径約12メートル、厚さ76センチメートルと頑丈に造られています。これらの塔は、約300メートル間隔で正三角形を形成して配置されており、その姿は遠方からも目を引く存在です。

歴史的背景

日本海軍が無線通信の重要性を認識したのは日露戦争後で、その結果、1911年には主要都市や台湾に無線局の建設が計画されました。針尾送信所は1918年に着工し、1922年に完成しました。当時の短波通信技術は電離層の影響を受けやすく、長波通信の必要が高まっていたため、この送信所の建設が急がれました。建設の際、鉄材費が高騰していたため鉄筋コンクリートが選ばれたという背景があります。

誕生から数年後の1941年には、太平洋戦争が始まり、針尾送信所も戦争に関連する通信を担うことになりました。ただし、戦争中には無線通信技術の変化により、その重要性は薄れ、戦争の終わり頃には無線塔が食料倉庫として利用されるケースもありました。

近代の変遷

1948年には海上保安庁の送信分室が設けられ、1954年からは海上自衛隊との共同利用が開始されましたが、1997年に新しい無線施設が完成したことで、針尾送信所の役割は終わりました。その後、針尾島内にある浦頭引き揚げ記念公園など、第二次世界大戦の跡が残っています。

現在の状況

針尾送信所は、2009年にDOCOMOMO JAPANによって日本のモダン・ムーブメント建築に選定されました。2013年には無線塔や電信室、油庫などが国の重要文化財に指定され、近い将来には観光用の通路や案内施設が整備され、塔内の見学も可能になる予定です。2022年からは劣化状況や耐震性の調査が行われ、2023年には1号塔の基礎部分が掘削され、その進捗が一般公開されました。

見学情報

2013年3月からはボランティアによる送信所の見学案内が実施されており、平日はもちろん、土日も訪問が可能です。1号塔は外観のみの見学ですが、油庫や電信室は内部も公開されています。3号塔の出入口周辺も見ることができますが、2号塔は立ち入れない区域となっています。

アクセス

針尾送信所へのアクセスは、車の場合、西海パールラインの針尾ICから国道202号を利用できます。バスを利用する場合は、佐世保駅や早岐駅から西肥バスに乗り、高畑バス停で下車し、徒歩約30分の距離にあります。

針尾送信所は、映画や小説、アニメなどさまざまな作品にも登場しており、その文化的な価値は今後も高まり続けることでしょう。

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