釣り糸

釣り糸

釣り糸とは、釣りに用いられる細い糸のことです。釣り竿やリールに繋がる太めの糸を「道糸（ライン）」、針に繋がる細めの糸を「ハリス（鉤素）」と区別するのが一般的です。

概要

現代の釣り糸には、魚に警戒されないように細くて見えにくいことと、大物の強い引きにも耐えられる強度が求められます。しかし、糸の細さと強度は両立が難しく、魚に見えにくくすることは、釣り人にとっても扱いづらさに繋がります。そのため、釣り糸は「細くて強く、魚から見えにくく、人から見えやすい」という、相反する要素を高いレベルで実現することが求められる、非常に奥深い道具と言えます。

現在主流なのは、釣り糸専用に開発されたナイロンやフロロカーボンといった合成繊維や、強度に優れたPEラインと呼ばれる編み糸です。マグロなどの大型魚を狙う場合は、道糸・ハリスともに金属ワイヤーが用いられることもあります。また、フライフィッシング用のフライラインや、マダイ釣りで使用するビシマ糸のように、糸自体に重量を持たせ、ポイントまで糸の重さで到達させることを目的としたものも存在します。

釣りの仕掛けにおける役割

日本ではかつて、竿、糸、浮き、オモリ、釣り針、エサを「釣りの六物」と呼び、釣りに欠かせない道具としていました。しかし、糸と針、エサだけでも魚を釣る「手釣り」という手法があるように、釣り糸と釣り針は釣りを成立させる上で、必要不可欠な道具と言えます。それだけに、釣り糸の品質は釣果を大きく左右する、非常に重要な要素です。

基本的な仕掛けでは、釣り竿の先端やリールに釣り糸を結び、その先に釣り針を結びつけます。必要に応じて浮きやオモリを間に取り付けます。より複雑な仕掛けでは、釣り竿から仕掛けまでの糸と、釣り針周辺の糸で太さや材質を変えることがあります。

歴史

ナイロン糸が普及する以前は、テグスサンという蛾の幼虫の絹糸腺から作られるテグスや、絹糸などが用いられていました。テグスは、クスサンの幼虫を解体し、絹糸腺を取り出して細く引き延ばし、酢で固定するなどの手法で作られていました。

江戸時代中期には、薬剤を縛る半透明の紐を見た漁師が「これを使えば魚がいくらでも釣れる」と言ったことがきっかけで、大阪の薬問屋がテグス商を始めたとされています。このテグスが釣り糸として広まったことで、釣りの世界に大きな変化をもたらしました。現在でも、釣り糸のことをテグスと呼ぶことがあります。

種類

釣り糸には様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。

ナイロンライン: 最も一般的な釣り糸で、価格が安く、初心者でも扱いやすいのが特徴です。適度な伸びがあり、魚をバラしにくいというメリットがあります。ただし、紫外線や水を吸収しやすく、劣化しやすいというデメリットもあります。
フロロカーボンライン: 根ズレに強く、水中で見えにくいという特徴があります。ナイロンラインよりも比重が重く、沈みが速いという特徴もあります。低温に強いのも特徴です。
* PEライン: 強度が高く、劣化しにくいという特徴があります。また、伸びが少ないため、感度が良いというメリットがあります。一方で、価格が高く、結び目が弱いというデメリットがあります。摩擦にも弱いです。

太さ・強度

日本では、釣り糸の太さを号数で表記します。号数が大きいほど太く、強度も高くなります。ルアーフィッシングやフライフィッシングでは、ポンド（lb）単位で強度を表すこともあります。

環境への影響

釣り糸は、使用しているうちに劣化したり、魚に切られたりすることがあります。また、根がかりした際に、手元で切断せざるを得ない場合もあります。その結果、釣り場には釣り糸が放置され、環境汚染の原因となっています。釣り糸が水辺の生き物に絡みつき、傷つけたり、命を奪ったりするケースも報告されています。

近年では、自然分解される生分解性プラスチック製の釣り糸の開発が進められており、一部のメーカーから商品化されています。釣り人は、釣り糸を適切に処理し、環境への負荷を減らすように心がける必要があります。

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