長谷川晶一

長谷川晶一（はせがわ しょういち）氏は、1970年5月13日生まれの日本のノンフィクション作家、ライターです。特に、独自の視点からプロ野球界を深く掘り下げた著作で知られ、さらに「NPB12球団ファンクラブ評論家」というユニークな肩書きでも活動しています。

東京に生まれ育った長谷川氏は、早稲田大学商学部を卒業後、主婦の友社に入社し、単行本の編集や若者向け人気雑誌『Cawaii!』の編集業務に携わるなど、出版業界で経験を積みました。この経験を活かし、2003年に独立してノンフィクションライターとしてのキャリアをスタートさせました。

ライター転向後、初期から力を入れていたテーマの一つが女子野球です。長年にわたり取材を重ね、その発展を追っています。また、初期の著作である『ダンス・ラブ・グランプリ』は、高校ダンス部を追った作品で、後にフジテレビ系列で放送されたテレビドラマ『ダンドリ。〜Dance☆Drill〜』の原案となりました。

長谷川氏の活動の中でも特筆すべきは、2005年から現在まで継続している「NPB12球団ファンクラブ評論家」としての活動です。これは、プロ野球全12球団の公式ファンクラブすべてに同時に入会し、各球団のサービス内容、特典、会員数の推移、運営方針などを徹底的に比較分析するというものです。この地道な活動を通じて、各球団のファンサービスの現状や課題を洗い出し、あるべき姿について積極的に提言を行っています。ファン目線に立ったこの独自の切り口は多くの注目を集め、彼の代名詞ともなっています。

個人的な側面では、熱烈な東京ヤクルトスワローズファンであることは広く知られています。スワローズファンになったきっかけは小学生時代に遡ります。当時、テレビでよく見ていた読売ジャイアンツには子ども向けのファンクラブが見当たらず、代わりにチームカラーが青で、自宅のあった千葉県から球場に通いやすかったスワローズのファンクラブに入会したといいます。そして、1980年4月26日の初観戦で、角富士夫選手が見せた劇的な逆転2ランホームランに心を奪われ、以来40年以上にわたり揺るぎないスワローズ愛を貫いています。

長年にわたりプロ野球を主要なテーマとして執筆活動を行ってきましたが、特定の球団、特にヤクルトスワローズを正面から扱った著作は、意外にも2017年頃までは少数でした。しかし、2017年5月に出版した『いつも、気づけば神宮に：東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』を機に状況が変化します。以降、スワローズの選手や歴史、チーム文化に深く迫る著作が相次いで刊行されるようになり、SNSなどでも積極的にスワローズファンであることを公言し、ファンとの交流も深めています。

長谷川氏の著作は、野球を中心にしながらも非常に多岐にわたります。プロ野球12球団のファンクラブに焦点を当てた『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!』や、女子野球を扱った『マドンナジャパン 光のつかみ方：世界最強野球女子』、野球史に埋もれた球団を描いた『最弱球団：高橋ユニオンズ青春記』や『虹色球団：日拓ホームフライヤーズの10カ月』、特定球団の歴史や選手に迫った『いつも、気づけば神宮に』、『幸運な男：伊藤智仁 悲運のエースの幸福な人生』、『詰むや、詰まざるや：森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』など、その守備範囲は広大です。また、野球関連以外にも、かつて編集に携わったギャル雑誌『Cawaii!』の歴史を紐解いた『ギャルと「僕ら」の20年史』、プロレスラーを描いた作品、さらには『生と性が交錯する街：新宿二丁目』や『中野ブロードウェイ物語』といった街をテーマにした著作も手がけるなど、その筆致は様々なジャンルに及んでいます。

多角的な視点と深い取材に基づいたノンフィクション作品に加え、長年のファンクラブ活動から培われた独自の切り口でプロ野球界を見つめ、愛する球団への熱い思いを作品に昇華させる長谷川晶一氏は、日本のスポーツノンフィクション界において独自の存在感を放っています。

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