長谷川逸子

長谷川逸子の建築の世界

長谷川逸子（はせがわ いつこ）は1941年12月1日に生まれ、建築業界で大いに名を馳せている日本の建築家です。静岡県焼津市出身で、大学では関東学院大学工学部建築学科を卒業後、東京工業大学で研究生として学びました。彼女は1979年に「長谷川逸子・建築計画工房」を設立し、それ以来多くの公共建築を手掛けてきました。

長谷川は伊東豊雄と共に「野武士世代」と称され、この世代は日本の建築界に新たな風を吹き込む存在とされています。特に彼女の業績は、日本建築学会賞受賞や湘南台文化センターの公開コンペでの最優秀賞獲得など、数多くの受賞歴によって裏付けられています。1984年に完成した眉山ホールでは作品賞を受賞し、その名声は瞬く間に広がりました。

幼少期からの影響

長谷川の父は多くの事業を営んでおり、彼女の育った環境は多岐にわたる経験を与えてくれました。体が弱かったため、母の勧めで軟式テニス部に所属するなど、健康面での工夫もなされました。建築に興味を持ったきっかけは、造船学科への進学を試みたものの女子が募集されていなかったことです。これを契機に、建築家になることを決意します。 当時は女性が工学部へ進むことが難しいとされていましたが、彼女は高校での登校拒否を経て、関東学院大学建築学科への入学を果たします。

大学時代と独立への歩み

大学では松井源吾のもとで構造学を学びながら、菊竹清訓事務所でアルバイトを始めます。在籍中に「浅川テラスハウス」の実施設計を行い、建築の魅力に気づきました。卒業後、菊竹の事務所に就職し、そこでの経験が彼女のキャリアに大きく寄与しました。1969年には東京工業大学の篠原一男研究室に研究生として加入し、本格的に住宅設計に携わり始めます。自身の住宅設計の初仕事は1972年に完成した焼津の家です。

設立後の業績

1979年、長谷川は38歳で自身の事務所を設立し、湘南台文化センターの建築コンペでの勝利を皮切りに、公共建築における女性設計者としての地位を確立しました。このプロジェクトでは、市民との積極的な意見交換を重ねた結果、より柔らかく、かつ活気のある建築を実現しました。1990年には湘南台文化センターのプログラムでエイボン芸術賞を受賞し、さらに新潟市民芸術文化会館などの公共建築を手掛けることになります。

社会的貢献と評価

長谷川の業績は建築界に留まらず、2005年には男女共同参画の功労者として内閣総理大臣表彰を受けるなど、社会的にも高く評価されています。ギャラリー「gallery IHA」を2016年に開設し、建築とアートの融合を目指す取り組みを行っています。また、2018年にはロイヤル・アカデミー・オブ・アーツから建築賞も受賞しました。彼女の著作は豊富で、その中には建築の理論的な探求や自身の設計哲学が色濃く反映されています。

長谷川逸子は、形式や機能を追求するだけでなく、人々との対話を通じて建築の在り方を模索し続けている建築家であり、その存在は今後も日本の建築界において重要な役割を果たし続けるでしょう。

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