関孝弘

日本のピアニスト、関孝弘（せき たかひろ）氏は、国内外で幅広く活躍する実力派として知られています。

東京に生まれた関氏は、5歳でピアノの手ほどきを受けました。学生時代からその才能を開花させ、第20回全日本学生音楽コンクール中学校の部で第2位に入賞。その後、東京芸術大学付属音楽高校を経て同大学へ進学し、在学中には第45回日本音楽コンクールで第2位および安宅賞を受賞するなど、輝かしい成績を収めました。

さらなる研鑽のため、イタリアのブレーシャ国立音楽院に留学。この地で国際的なキャリアの礎を築き、フィナーレ・リーグレ国際音楽コンクール第2位、ザンボーニ国際コンクール第1位をはじめ、ベッリーニ、ラフマニノフ、エンナなど、ヨーロッパ各地で開催された数多くの国際コンクールで上位入賞を果たし、国際的な注目を集めることとなります。

コンクールでの成功を足がかりに、ヨーロッパ全土での演奏旅行を開始。ソリストとして、国内の東京交響楽団、東京都交響楽団のほか、旧レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団、モスクワ国立交響楽団、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団、ベニス室内合奏団といった世界の著名なオーケストラと共演を重ね、国際的な舞台での評価を確立しました。

教育活動にも熱心で、1988年から2005年まで東京芸術大学で講師を務め、後進の指導にあたりました。また、執筆家としても才能を発揮し、音楽用語を分かりやすく解説した書籍「これで納得! よくわかる音楽用語のはなし」を上梓。この本は異例のベストセラーとなり版を重ね、中国語にも翻訳出版されました。その好評を受けて、2010年には続編となる「一目で納得! 音楽用語事典」も刊行されています。

特にイタリアとは深いつながりを持ち、イタリア文化の普及への多大な貢献が認められ、2011年にはイタリア政府より文化功労勲章コメンダトーレ章を授与されました。さらに、2014年にはイタリアのフィナーレ・リーグレ市より名誉市民の称号を与えられるなど、その功績は高く評価されています。関氏は、イタリアのピアノ作品、特に日本ではあまり知られていない作曲家の作品を意欲的に紹介しており、国内初演となる演奏も数多く行っています。日伊音楽協会の理事も務めるなど、両国の文化交流にも尽力しています。

これまでに、徳間ジャパンやコロムビアミュージックエンタテインメント、自身のレーベルであるブリッランテから、数多くのCDをリリースしています。特に、イタリア作品（チマローザ、ガルッピ、レスピーギ、ニノ・ロータ、カゼッラなど）やショパン作品など、幅広いレパートリーが収録されています。また、全音楽譜出版社からは多数の楽譜が出版されており、教育現場などでも活用されています。演奏活動においては、東京文化会館大ホールでのピアノリサイタルシリーズが2005年から毎年開催されており、多くの聴衆を魅了しています。

音楽界での活動に加え、社会貢献にも関心を寄せ、スマイルオブキッズの理事を務めています。また、パルマ・ドーロ国際ピアノコンクールではアロイーズ・ヴェッキアート賞の審査委員長を務めるなど、後進の育成や国際交流にも積極的に関わっています。

さらに興味深いことに、関氏は幕末の探検家として知られる松浦武四郎の玄孫にあたる家系を持っています。2022年には、リニューアルオープンした松浦武四郎記念館で記念のピアノリサイタルを開催するなど、自身のルーツにもつながる活動も行っています。

国際的な実績、幅広いレパートリー、教育・執筆活動、そしてイタリアとの深い絆など、多角的な活動を展開し続ける関孝弘氏は、日本の音楽界において重要な存在であり続けています。

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