阿房宮

阿房宮についての詳細

阿房宮（あぼうきゅう）は、中国の秦の始皇帝が手がけた壮大な宮殿で、現在の陝西省西安市未央区に位置する阿房宮村にその遺跡が残っています。この宮殿は、秦帝国の首都であった咸陽から渭水を挟んで南側に建設され、始皇帝の国家統一の記念碑でもあると言えます。

建設の背景

秦が領土を広げ、咸陽の人口が増加するにつれ、旧来の咸陽宮殿は手狭になりました。そこで始皇帝は、新たな宮殿を建設する計画を立て、渭水の南部にあたる上林苑に朝宮を設置し、その前殿を阿房の地に造ることを決定しました。この工事には受刑者約70万人が動員され、前殿である阿房宮と始皇帝の陵墓である驪山陵の建設が行われました。

阿房宮の建設は紀元前219年に始まりましたが、始皇帝の死後も作業は続けられました。しかし、秦の滅亡によってこの壮大な計画は未完のまま終わりました。

名前の由来

阿房宮という名称は、地域名に由来していると言われていますが、宮殿の形状が「四阿旁広」に似ているため、この名がつけられたとも言われています。他の説では「宮阿基旁」という形容から名付けられたとも伝えられています。

阿房宮の規模と容姿

阿房宮の大きさについては諸説あり、内部には1万人が座れるスペースがあったとされています。また、外部に柵が設けられ、廊下が設置されており、南山に至ることができる複雑な通路が存在しました。これらは、天の川を渡る星々にインスパイアされたデザインとも言われています。

更に、秦国には多くの宮殿が存在し、300近くが関中に、400を超える施設が関外に建設されたと言われています。これにより、周囲の民家は他の地域へと移住せざるを得なくなり、咸陽周辺の街並みにも多大な影響を与えました。

また、阿房宮はかつての六国の宮殿を模範にして造られたとされ、各国の美しい女性たちがこの宮殿で秦の権力者たちに仕える場面が描かれています。唐代の詩人杜牧による「阿房宮賦」は、当時の華やかさをよく表しています。

破壊とその後

『史記』の項羽本紀には、項羽が咸陽に侵入し、秦の王子を殺した際に宮殿が焼かれたと記載されています。このため伝統的には阿房宮は焼失したと考えられてきました。しかし、2003年に新たな説が提唱され、焼かれたのは咸陽宮であり、阿房宮は無事であった可能性が指摘されています。もしこれが真実であれば、阿房宮は漢王朝設立後も利用されていたことが考えられます。

文化財としての保護

阿房宮の遺跡は1961年に中華人民共和国の全国重点文物保護単位に指定されました。これにより、その歴史的価値が認識され、保護活動が行われています。

その他の関連

日本においては、食用菊の一種である黄花八重大輪に「阿房宮」という名前が付けられています。このように、阿房宮は歴史だけでなく、現在の文化にも影響を与えています。

もう一度検索