杜牧

杜牧（と ぼく）

杜牧（803年 - 853年）は、晩唐の時代に活躍した中国の詩人です。字は牧之、号は樊川といいました。彼は、西晋の杜預の子孫にあたり、祖父は歴史家の杜佑という名門の家柄に生まれました。

生涯

長安で生まれた杜牧は、25歳で進士に合格し官吏となります。文学奨励会で才能を発揮した後、各地の要職を歴任しました。揚州では風流な生活を送り、多くの詩作を残しました。しかし、政変の影響で中央での出世は叶わず、地方官を転々とすることになります。

848年に中央に戻り、吏部員外郎となりますが、850年に病に倒れ、翌年亡くなりました。

作風と作品

杜牧の詩は、晩唐の技巧的な風潮を避け、平明で豪放な作風が特徴です。風流詩や詠史詩、時事諷詠を得意とし、艶麗さと剛健さを兼ね備えた作品を多く残しました。杜甫を「老杜」と呼ぶのに対し、杜牧は「小杜」と呼ばれ、李商隠と共に「晩唐の李杜」と称されています。

代表作としては、江南の美しい風景を描いた「江南春」、揚州での風流な生活を詠んだ「遣懐」、項羽の悲劇を詠んだ「題烏江亭」などがあります。また、賦では「阿房宮賦」が有名です。

江南春：江南の美しい風景を短い言葉で鮮やかに描写した詩。
遣懐：揚州での遊蕩生活を振り返り、過ぎ去った日々への郷愁を込めた詩。
題烏江亭：項羽が烏江で自害した場面を詠み、歴史の教訓を語る詩。「捲土重来」の語源としても知られています。
阿房宮賦：秦の阿房宮の壮大さと、その背後にある民衆の苦しみを描いた賦。

影響と評価

杜牧は、晩唐を代表する詩人として、後世に大きな影響を与えました。彼の詩は、多くの人々に愛され、様々な形で引用されています。しかし、明代の『唐詩選』には一篇も選ばれていません。

また、恋愛詩も多く残しており、「十年一たび覚む揚州の夢、贏ち得たり青楼薄倖の名」という句は特に有名です。ただし晩年に恋愛詩の多くを焼き払ってしまったため、現存するものは少ないです。

その他

「清明」や「秋夕」といった詩も残っています。特に「秋夕」は、杜牧の家の没落を暗示していると言われています。

現代においても、ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズが、杜牧の詩から一節を引用するなど、その影響力は衰えていません。

杜牧は、晩唐の時代を代表する詩人として、その作品は今もなお多くの人々に愛され続けています。

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