雪の宿

雪の宿（ゆきのやど）

雪の宿は、日本の菓子メーカーである三幸製菓が1977年（昭和52年）から製造・販売している、代表的なロングセラー商品のひとつです。主に米菓（せんべい）として知られていますが、かりんとうや地域限定の饅頭もラインナップされています。この菓子の最大の特徴は、塩味のきいた生地の上に、北海道産の生クリームを使用した風味豊かな白蜜をかけた独自の製法にあります。この甘じょっぱい組み合わせが多くの人々に愛されています。

開発の背景

三幸製菓は米菓業界では後発のメーカーでした。そのため、市場ですでに確立されていた他社の製品とは異なる、独自性のある商品開発に力を入れるという方針を取りました。当時、蜜をかけた米菓としては醤油味が主流でしたが、三幸製菓はあえて新しい味覚に挑戦しました。特に、油分を多く含むサラダせんべいの生地に、均一に蜜をかけることは技術的に非常に困難でした。開発チームは試行錯誤を重ね、担当者の中には新潟の老舗ケーキ店で製菓技術を学ぶなど、異分野の知見も取り入れながら、ついにこの独特の蜜がけ製法を完成させました。

名前の由来

「雪の宿」という特徴的な名前には、ユニークな誕生秘話があります。商品発売前、当時の三幸製菓の社長が出張で訪れた旅館に滞在していました。窓の外には雪が降りしきっており、その情景を眺めながら「こんな降りしきる雪を見ながら、温泉に浸かりつつ酒でも飲めば、さぞかし良い雪見酒になるだろう」と思いを巡らせました。この時、社長の頭の中に浮かんだ言葉が「雪見宿」でした。社長は早速、旅館から会社に電話をかけ、「商品名を『雪見宿』として登録するように」と指示を出しました。しかし、電話を受けた社員が社長の言葉を聞き間違えてしまい、社長が出張から戻った時には、商品名は「雪の宿」としてすでに正式に登録されてしまっていたといいます。意図せず生まれた名前ですが、その情景が目に浮かぶような風情ある名称として定着しました。

主なラインアップ

現在、「雪の宿」ブランドでは、定番のせんべいをはじめ、様々な商品が展開されています。

せんべい:
雪の宿サラダ（塩味） - 定番の主力商品です。（24枚入り、14枚入りなど）
雪の宿 黒糖みるく味 - 2019年に登場した新しい定番。（24枚入り）
期間限定品 - 抹茶、さつま芋、特濃タイプなど、季節や時期に応じて様々なフレーバーが登場します。
かりんとう:
雪の宿ミルクかりんとう - 白蜜をかけたかりんとうも人気です。（120g、74gなど）
期間限定品 - せんべいと同様に、特定の時期に特別なフレーバーが販売されます。

過去には、しょうゆ味や、梅味、レモン味、マンゴー味といった様々な期間限定のせんべいや、地域限定のまんじゅうなども販売されていました。

マスコットキャラクター

雪の宿には、可愛らしい公式キャラクターが存在します。2014年8月10日にデビューした「ホワミル」は、雪の宿の公式キャラクターです。「ホワミル」という名前は、製品の白蜜に使用されているホワイトミルクと、せんべいの持つホワホワとした柔らかな食感を組み合わせたものです。

ホワミルの設定:
ホワミルはやど村からやってきた、生クリームの妖精の男の子とされています。お腹を空かせて困っていたところを、偶然出会った心優しいおばあちゃんに助けられ、その時にもらった雪の宿を食べて大ファンになりました。それ以来、ホワミルはおばあちゃんのことが大好きになり、おばあちゃんが作ってくれた青い袢纏を着たり、頻繁におばあちゃんの家を訪ねるようになりました。眠たくなると体が小さくなる性質があり、いつも持ち歩いている雪の宿の上で眠るのが習慣です。おばあちゃんはおじいさんと一緒にせんべい店を営んでおり、雪の宿黒糖みるく味が開発された際には、黒糖みるく味のキャラクターである「チャミル」も登場しました。ホワミルにとってチャミルは妹のような存在とされています。

類似品

雪の宿の成功を受けて、類似の商品も登場しています。例えば、セブン＆アイ・ホールディングスのプライベートブランドであるセブンプレミアムから、亀田製菓との共同開発による「あわ雪ソフトせん」が販売されています。また、亀田製菓の子会社はアメリカ市場向けに「Baked Frosted Rice Crackers」という名称で、類似したコンセプトの製品を展開しています。

雪の宿は、その独特な甘じょっぱい味わいと、親しみやすいキャラクターによって、長年にわたり多くの日本の家庭で愛され続けている菓子です。

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