青い傘

「青い傘」は、シンガーソングライター荒井由実（後の松任谷由実）が作詞・作曲を手がけ、歌手の太田裕美が1976年にリリースした楽曲です。太田裕美の5枚目のオリジナルアルバム『12ページの詩集』の3曲目に収録され、編曲は萩田光雄が担当しました。この楽曲は、荒井由実が他のアーティストに提供した作品の中でも特に知られている一曲です。

荒井由実が太田裕美へ提供した楽曲は、「青い傘」を含め、「袋小路」「ひぐらし」の全三曲が存在します。「青い傘」以外の二曲では、作詞を松本隆が担当しており、作詞作曲の両方を荒井由実自身が手がけた楽曲は「青い傘」のみとなります。この点からも、「青い傘」は太田裕美のレパートリーの中でも特別な位置を占めていると言えるでしょう。

荒井由実、すなわち松任谷由実自身は、「青い傘」を自身のオリジナルアルバムやベストアルバムでセルフカバーとして発表したことはありません。しかし、後年のライブイベントで一度だけ、この楽曲を歌唱する機会がありました。それは、2010年に開催された『Surf & Snow in Naeba vol.30』のネットパーティー企画におけるセルフカバーライブでのことです。このライブでは、ファン投票などではなく、ユーミン本人によって選曲され歌われました。その際に、楽曲制作当時の思い出話や、この曲にまつわるエピソードなども披露され、長年のファンにとって貴重な瞬間となりました。

苗場でのセルフカバーライブの折、ユーミンは「青い傘」の制作モチーフが、自身のアルバム『PEARL PIERCE』（1982年）に収録されている楽曲「消息」と何らかの形で結びついていることに言及しました。具体的な関連性は詳しく語られませんでしたが、両曲が内包する世界観や情景に共通するものがある可能性を示唆しています。また、2012年11月21日に放送されたFMCOCOLOの松任谷由実デビュー40周年記念特番に際し、ユーミンは太田裕美との縁について語る中で、「青い傘」に関する印象的なエピソードを明かしました。その内容とは、楽曲が完成した際、あまりにも良い出来栄えだったため、プロデューサーに対し「この曲は太田裕美には渡したくない」と本気で言ってしまうほど、自身で大切にしたい気持ちが強かったというものです。最終的には太田裕美への提供が決まったわけですが、このエピソードからは、クリエイターとして自身の作品に対する強い愛着や自信がうかがえます。

ユーミンが「青い傘」をライブで歌唱したのは、苗場でのセルフカバーライブだけではありません。近年のライブ、具体的には八王子ホテルニューグランドのチャペルコンサートでも歌唱されました。このチャペルコンサートでは、セットリストの1曲目として「青い傘」が選ばれ、会場に集まったファンを魅了しました。ユーミンはこのチャペルコンサートで「青い傘」を歌ったことで、改めて「とてもいい歌だ」と再認識したとも語っており、発表から長い年月を経ても色褪せない楽曲の持つ魅力を自身でも感じ取っている様子がうかがえます。

「青い傘」が最初に収録されたのは、前述の通り太田裕美のオリジナルアルバム『12ページの詩集』（1976年）です。その後も、太田裕美のベストアルバムなどに再録されており、代表的なものとしては『GOLDEN J-POP/THE BEST 太田裕美|GOLDEN J-POP_THE BEST 太田裕美』（1997年）や、荒井由実が他のアーティストに提供した楽曲を集めたコンピレーションアルバム『シンガー・ソングライターからの贈り物 荒井由実作品集「いちご白書」をもう一度/卒業写真』（2004年）などがあります。これらのアルバムを通じて、時代を超えて多くの音楽ファンに聴き継がれています。

もう一度検索