PEARL PIERCE

松任谷由実『PEARL PIERCE』：都会の輝きと心の風景

1982年6月21日、松任谷由実（ユーミン）の13枚目のオリジナルアルバム『PEARL PIERCE』（パール・ピアス）がリリースされました。東芝EMIからLPとカセットテープで発売され、同年11月1日には東芝EMIの第1弾CDとして発売。その後、1985年と1999年にはリマスター版がリリースされるなど、長きに渡り愛され続けている名盤です。

アルバムコンセプトとサウンド

本作は、ユーミンが都会で働くOLをイメージして制作されました。サックスブルーを基調としたジャケットからも感じられる、透明感とアンニュイなムードが特徴です。ユーミン自身も特に気に入っているアルバムの一つとして挙げており、都会生活の複雑な感情を繊細に表現した楽曲群は、多くのリスナーの共感を呼びました。ジャケット・アートディレクションは太田和彦氏、ブックレットイラストは安西水丸氏が担当し、洗練されたビジュアルも魅力の一つです。キャッチコピーは「YUMINGの世界は恋、愛、想、波乱万丈。刺激的。」

楽曲解説：多様な情景と感情

アルバム収録楽曲は、夏の情景を描いた「ようこそ輝く時間へ」、ファンレターを元に制作された「真珠のピアス」（TBSドラマ『ルージュの伝言』で主題歌として使用）、日比谷公園の昼休みを舞台にした「ランチタイムが終わる頃」、社会現象となっていた写真週刊誌を題材にした「フォーカス」など、バラエティに富んでいます。

「夕涼み」は、非売品サンプル7インチシングル盤で先行リリースされ、ユーミン自身も夏の歌の中で最も気に入っていると語っています。「私のロンサム・タウン」は新潟を舞台にしたご当地ソングで、晩秋のライブツアーのオフを思わせる情景が描かれています。「DANG DANG」は、1984年には富士フイルムのCMソングとして起用され、金子マリによるカバーも存在します。「昔の彼に会うのなら」は、1976年に提供した楽曲「二人は片想い」をセルフカバーした作品です。

これらの楽曲は、恋愛や日常の出来事、そして都会の風景など、多様なテーマを扱い、ユーミンの幅広い表現力と音楽性を示しています。後年、ユーミン自身はラジオ番組で本作について「もっと歌唱力があれば良かったのに…」と語っていますが、それでもなお、このアルバムは彼女の代表作の一つとして輝き続けています。多くのベストアルバムにも収録されており、『Neue Musik』『日本の恋と、ユーミンと。』『ユーミン万歳！』など、その人気は揺るぎません。特に『ユーミン万歳！』では、2022年mixで収録されています。

参加ミュージシャンと制作陣

本作には、松任谷正隆氏（キーボード）、松原正樹氏、鈴木茂氏（ギター）、高水健司氏（ベース）、林立夫氏、島村英二氏（ドラムス）など、日本の音楽シーンを代表するミュージシャンが参加。さらに、Jake H. Conception氏（サックス）、トマト・ストリングス・アンサンブル、山川恵子氏（ハープ）といった実力派ミュージシャンも名を連ねています。

アルバムの評価と影響

『PEARL PIERCE』は、1982年の第24回日本レコード大賞ベストアルバム賞を受賞するなど高い評価を受けました。数々の楽曲がベストアルバムに収録され、現在でも多くのリスナーに愛され続けていることは、このアルバムの完成度の高さを示しています。都会の風景と女性の心情を繊細に描き出したこの作品は、日本の音楽史において重要な位置を占める名盤と言えるでしょう。アルバムを通して聴くことで、都会の日常の中に潜む、喜びや悲しみ、そして複雑な感情を深く感じ取ることができます。

全国コンサートツアー

アルバム発売に合わせ、『PEARL PIERCE～ようこそ輝く時間へ～』と題した全国コンサートツアーが1982年9月13日から1983年2月6日まで開催されました。このツアーは、アルバムの世界観をさらに深く体験できる機会となり、多くのファンを魅了しました。

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