魔法人形

『魔法人形』

概要

『魔法人形』は1957年に江戸川乱歩によって執筆され、月刊誌『少女クラブ』で連載されていた児童向けの推理小説です。本作は少年探偵団シリーズの初の少女誌連載作品であり、その後ポプラ社から改題された『悪魔人形』としても知られています。少女向けに配慮し、主人公の小林少年が女装する場面や、花崎マユミという少女探偵が登場するなど、特異な工夫が盛り込まれています。また、今作には新たにチンピラ別働隊のポケット小僧が登場し、物語に刺激を与えています。

あらすじ

物語は小学生のルミが不思議な腹話術師に誘拐されるところから始まります。数日後、ルミの家には彼女と瓜二つの人形が届けられ、身代金が要求される奇妙な事件が展開されます。主人公の小林少年は、人形を送りつけたという赤堀鉄州という人形師のもとに潜入捜査に乗り出します。彼は事件の背後に潜む様々な謎を解明しようと奮闘する中、身代金一千万円と共に、一つの宝物である「ほのおの宝冠」を盗み取ることを企む怪盗・二十面相の影が見え隠れします。

主要人物

• - 小林芳雄: 明智小五郎の助手で、「小林少年」または「小林君」と通称される。彼は少年探偵団の団長として事件の解決に挑む。
• - 怪人二十面相: 様々な変装を駆使して行動する怪盗で、神出鬼没の存在。自らを「二十面相」と名乗り、その巧妙さで周囲を翻弄する。
• - 明智小五郎: 名探偵であり、二十面相のライバル的存在。事件解決に向けた鋭い洞察力を持つ。
• - 花崎マユミ: 明智の姪であり、小林少年が不在の際には少年探偵団のリーダーとして活躍する。
• - 赤堀鉄州: 特異な人形作りを行う変わり者の人形師。

舞台

東京の赤坂見附、杉並、渋谷を中心に物語が展開されます。これらの地域が持つ独特の雰囲気は、作品に深みを与えています。

制作背景

本作の連載当時、江戸川乱歩は執筆ペースが遅く、イラストレーターの石原豪人は乱歩からのメモを基に物語の展開を想像してイラストを完成させていました。乱歩自身はそのイラストを参考にして物語の整合性を図るという独特な制作過程がありました。

書誌情報

• - 光文社: 少年探偵団全集18『魔法人形』 (1957年)
• - ポプラ社: 少年探偵23『悪魔人形』 (1970年)
• - 講談社: 江戸川乱歩推理文庫38『魔法人形／サーカスの怪人』 (1988年)
• - ポプラ社: 少年探偵17『魔法人形』 (1999年)
• - 光文社: 江戸川乱歩全集 第20巻『堀越捜査一課長殿』 (2004年)
• - ポプラ社: 文庫（新装版）第17巻『魔法人形』 (2005年)
• - ポプラ社: 文庫クラシック 第17巻『悪魔人形』 (2009年)
• - 貸本漫画 あかしや書房: ちばてつや作画『魔法人形』 (1958年)

映画

2021年には本作を原案とした映画『聖なる蝶 赤い部屋』が公開されました。

関連項目

• - 明智小五郎
• - 怪人二十面相
• - 少年探偵団

外部リンク

• - 『魔法人形』 - 青空文庫

もう一度検索