鮮魚列車

鮮魚列車と伊勢志摩お魚図鑑：伊勢志摩の海の幸を運んだ列車たち

近畿日本[[鉄道]]（近鉄）で長年運行された「鮮魚列車」は、三重県伊勢志摩地方から大阪へと新鮮な魚介類を運ぶ、行商人専用の団体列車でした。1963年から2020年までの約半世紀にわたり、地域の経済を支える重要な役割を果たしました。本稿では、鮮魚列車の歴史と、その系譜を受け継ぐ「伊勢志摩お魚図鑑」について、詳しく解説します。

鮮魚列車：半世紀にわたる軌跡

1950年代後半、三重県から大阪へ魚介類を運ぶ行商人が増加しました。近鉄は、魚介類の臭いや衛生面などを考慮し、1963年、伊勢志摩魚行商組合連合会のために鮮魚列車の運行を開始しました。

一般の乗客は利用できず、時刻表にも掲載されていなかったため、「幻の電車」とも呼ばれていました。早朝に宇治山田駅を出発し、大阪上本町駅へ向かい、夕方には大阪から松阪駅へと戻るダイヤでした。

車内には、発泡スチロールや段ボール箱に入った新鮮な魚介類が積み込まれ、行商人の活気に満ち溢れていました。当初はブリキの箱を使用していましたが、後に発泡スチロールへと移行しました。

停車駅は宇治山田、伊勢市、松阪、伊勢中川、榊原温泉口、伊賀神戸、桔梗が丘、名張、榛原、桜井、大和八木、大和高田、布施、鶴橋、大阪上本町駅と、近鉄の主要駅を網羅していました。行商人の多くは大阪上本町駅まで利用していましたが、途中駅で下車し、他の市場で買い付けを行う者もいました。

車両は時代とともに変化しました。初期には一般車両を改造したものが使用され、後に専用車両として1481系、2680系などが導入されました。これらの車両は、冷房設備やトイレなどを備え、行商人の快適性を考慮した設計となっていました。

しかし、自動車の普及や行商人の高齢化、後継者不足などの影響を受け、鮮魚列車の利用者は徐々に減少しました。2014年には20名ほど、廃止直前には数名にまで減少し、2020年3月13日をもって運行が終了しました。

伊勢志摩お魚図鑑：鮮魚列車の系譜

鮮魚列車の廃止を受け、近鉄は後継となる「伊勢志摩お魚図鑑」を導入しました。これは、一般列車に連結される鮮魚運搬専用の車両です。2410系を改造した車両で、車体には伊勢志摩の様々な魚介類が描かれており、鮮やかなデザインとなっています。

一般客の誤乗を防ぐため、乗降扉の一部は閉鎖され、行商人のみ利用できるよう工夫されています。また、トイレがないため、必ずトイレ付き車両と連結して運行されています。

運行ダイヤは平日のみで、松阪駅と大阪上本町駅間を運行しています。鮮魚列車と比較すると運行範囲は狭まりましたが、伊勢志摩の海の幸を届ける役割を引き継いでいます。

まとめ

鮮魚列車は、長年にわたり伊勢志摩の経済を支え、地域住民の生活に深く関わってきた列車でした。その歴史は、日本の地方鉄道と地域社会の関係性を示す貴重な事例と言えるでしょう。伊勢志摩お魚図鑑は、新しい方法で海の幸を運ぶ役割を担い、地域経済への貢献を続けています。鮮魚列車と伊勢志摩お魚図鑑は、日本の鉄道史に刻まれた、重要な存在なのです。

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