鷽替え

鷽替え（うそかえ）

鷽替えは、日本の伝統的な神事の一つで、主に学問の神様として崇敬される菅原道真公を祭神とする神社、特に天満宮を中心に斎行されます。「鷽（ウソ）」という鳥の名が「嘘（うそ）」に通じることから、前年に起こった災難や不幸な出来事を「嘘」とし、新たな年には良いことだけが起こるようにと、吉兆を願う意味合いが込められています。

神事の内容と広がり

この神事は、古くは福岡県の太宰府天満宮で、正月の夜に鬼すべという神事と共に行われる吉兆を招く儀式として始まりました。それが時代を経て全国各地に広まり、現在では東京の亀戸天神社、大阪の大阪天満宮、藤井寺市の道明寺天満宮など、多くの天満宮で執り行われています。また、天満宮だけでなく、福岡市の住吉神社をはじめとする他の神社でも見られることがあります。

神事の最も特徴的な行事として知られるのが、「木うそ」と呼ばれる木彫りの鷽鳥を交換しあう儀式です。参加者は「替えましょ、替えましょ」という掛け声とともに、持っている木うそを他者のものと交換します。これは、昨年の「嘘」（災い）を新しい「嘘」（吉）と取り替えることを象徴しているとされます。ただし、神社の慣習によって形式は異なり、例えば亀戸天神社では、前年に神社から受けた木うそを納め、新しいものをいただくという形で行われます。

由来と授与品

鷽替え神事の由来については、太宰府天満宮に伝わる故事が広く語られています。菅原道真公が当地で災難に見舞われた際、群れをなしたウソの鳥が現れて公を助けたという伝承です。このため、多くの天満宮では、このウソ鳥をかたどった縁起物として木うそを授与しています。近年では、木うそだけでなく、張り子や土人形、さらには陶器や磁器製のウソ鳥も授与されるようになり、その種類は豊かになっています。

天神信仰の中心地の一つである京都市の北野天満宮では、伝統的に鷽替え神事や木うその授与は行われていませんが、北野天満宮から分霊された多くの天満宮では、この神事が継承され、斎行されています。かつて三天神の一つとされた山口県の防府天満宮でも、古い記録には鷽替え神事の存在が記されていますが、残念ながら現在では行われていません。

斎行される時期

鷽替え神事の斎行日は、神社によって様々です。多くの神社では正月期間中に行われますが、具体的な日程は異なります。例えば、太宰府天満宮では1月7日の夕刻に、亀戸天神社では1月24日と25日に斎行されます。また、道真公が讃岐守を務めた香川県の滝宮天満宮では4月24日に、富山県の於保多神社では4月25日に行われるなど、春に斎行する例も見られます。正月の初天神にあたる1月25日前後に執り行う神社も多くあります。

以下に、主な斎行日と神社の一部を挙げます。

1月7日
太宰府天満宮（福岡県太宰府市）
住吉神社（福岡県福岡市）
1月24日, 25日
亀戸天神社（東京都江東区）
大阪天満宮（大阪府大阪市）
1月25日（初天神）
湯島天満宮（東京都文京区）
道明寺天満宮（大阪府藤井寺市）
4月24日
滝宮天満宮（香川県綾川町）
11月3日
* 谷保天満宮（東京都国立市）

このように、鷽替えは、災いを払いのけ吉を招く願いを込めて、日本の各地で親しまれている独特の神事です。神社ごとに異なる趣向や歴史があり、それぞれの地域で大切に受け継がれています。

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