ウソ

ウソ（鷽）

ウソ（学名：Pyrrhula pyrrhula）は、スズメ目アトリ科ウソ属に分類される鳥類の一種です。その名の由来は、古くから口笛を意味する言葉「うそ」から来ており、特徴的な「ヒーホー」という口笛のような鳴き声にちなんで名付けられました。この細く、どこか物悲しい響きを持つ鳴き声は、古来より人々に親しまれ、江戸時代には「弾琴鳥」や「うそひめ」といった雅称でも呼ばれていました。

特徴

体長は15～16センチメートル、翼を広げると約26センチメートルになり、体重は21～34グラム程度で、スズメよりやや大柄です。体の上面は上品な灰青色で、頭のてっぺん、尾羽、そして翼の大部分は黒い羽に覆われています。くちばしは短く太く、色は黒色です。性的二型が見られ、オスの頬から喉にかけては淡い桃色をしていますが、メスにはこの色は現れません。この違いから、オスは「照鷽」、メスは「雨鷽」とも呼ばれます。

分布と日本での亜種

ユーラシア大陸の広範囲、ヨーロッパからアジアの北部にかけて広く分布しています。北方に繁殖する個体は、冬季になると温暖な南方へ移動します。

日本では、主に冬鳥として、または一部で漂鳥として全国各地で見られます。国内で観察される主な亜種は以下の通りです。

ウソ (P. p. griseiventris): 本州中部より北の亜高山帯などで繁殖し、冬場は九州を含む低地へ南下して越冬します。
*アカウソ (P. p. rosacea): サハリンなどで繁殖し、冬鳥として秋から春にかけて日本に飛来します。オスの胸から腹にかけては淡い紅色を帯びています。北海道では少数が繁殖している可能性が指摘されています。
*ベニバラウソ (P. p. cassinii)*: 東シベリアなどに分布し、冬鳥として北海道や本州の一部にまれに飛来します。オスの胸から腹にかけてはより鮮やかな紅色をしています。

生態

繁殖期には山地の針葉樹林を主な生息地としますが、繁殖期以外は低地の林でも見られます。普段は10羽程度で小さな群れを作って行動することが多いです。

食性は季節によって変化します。春先には樹木の芽や木の実、時にはサクラ、ウメ、モモといったバラ科の花や蕾も食べます。繁殖期にあたる夏頃は、ガの幼虫やクモなどの昆虫類を主に捕食します。秋になると、ズミやナナカマドなどの木の実を好んで食べます。

繁殖期は例年5月から7月頃で、つがいごとに縄張りを持ちます。巣は針葉樹の枝の上に枯れ枝などを利用して椀型に作られます。一度の繁殖で4～6個の卵を産み、抱卵はおよそ12～14日間、主にメスが行います。雛は孵化後12～18日ほどで巣立ちます。

鳴き声の中で最も特徴的な囀りは、「フィー、フィー」と聞こえる澄んだ口笛のような声で、単調な節を繰り返します。この囀りはオスだけでなくメスも発することが知られています。囀る際には、まるで琴を弾くように左右の脚を交互に持ち上げる仕草が見られることから、「弾琴鳥」の別名が生まれました。地鳴きとしては、「ヒー」や「フィッ」といった声を出します。飛ぶ際には、浅い波を描くような軌跡を描きます。

人間との関わりと保全

ウソは古くから様々な形で人々と関わってきました。材木につく虫を食べる習性があること、そして漢字の「鷽」が学問の「學」の旧字に似ていることから、菅原道真を祀る太宰府天満宮や亀戸天神社などでは「天神様の使い」とされ、木彫りの人形である「木鷽」がお土産として親しまれています。これらの神社では、古い木鷽を新しいものと交換する「鷽替え神事」が年中行事となっています。

一方で、春先に公園や果樹園でサクラ、ウメ、モモといった大切な植物の蕾を摘み取ってしまうため、特に果樹農家などからは「害鳥」と見なされ、駆除の対象となる地域もあります。

文化的な側面では、江戸時代の鳥類図譜『梅園禽譜』に描かれたり、高村光太郎の随筆『木彫ウソを作った時』に登場したりしています。また、1994年から2014年にかけて発行された130円の普通切手の意匠にも採用されていました。

世界的には比較的広い分布を持つものの、個体数は減少傾向にあるとされ、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、2004年から「軽度懸念」（LC）に指定されています。日本国内でも、生息地の状況などにより、一部の都道府県でレッドリストに掲載されています。

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