「是より北 木曽路」の碑

「是より北 木曽路」の碑は、岐阜県中津川市、旧中山道の馬籠宿と落合宿の間にある新茶屋集落にひっそりと佇む石碑です。この石碑は、かつて美濃国と信濃国の国境であった場所、すなわち木曽路の入り口を示す象徴として建立されました。

この地が県境であったのは、2005年（平成17年）2月13日に長野県木曽郡山口村が岐阜県中津川市に編入されるまで。それ以前は、まさにこの場所が県を隔てる境界線でした。碑が建てられたのは1957年（昭和32年）11月。藤村記念館の落成10周年を記念してのことです。碑に刻まれている文字は、著名な作家、島崎藤村が1940年（昭和15年）7月に地元からの依頼で揮毫したものです。当時、藤村は68歳であり、「藤村老人」と名乗っていました。碑の表面には、「是より北 木曽路 藤村老人」と記されています。この「り」の文字は、変体仮名で、漢字の「里」を崩したものです。また、この碑の近くには、松尾芭蕉の句「おくられつおくりつはては木曾の秋」を刻んだ句碑も建てられており、旅情を誘います。

興味深いことに、長野県塩尻市には、旧中山道の本山宿と贄川宿の間に、「是より南 木曽路」の碑が存在します。これは、「是より北 木曽路」の碑と対をなすもので、それぞれが木曽路の南北の入り口を示しています。

この石碑は、単なる道標としてだけでなく、歴史と文化の証人として、今日までその存在を伝えています。訪れる人々は、この場所で、いにしえの旅人たちが歩んだ道に思いを馳せ、木曽路の歴史を感じることができるでしょう。また、島崎藤村の筆跡を間近に見ることで、文学的な興味も満たされる場所です。

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