「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群

「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群

福岡県宗像市と福津市にまたがる「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群は、ユネスコの世界遺産に登録された、日本の21番目の遺産です。この遺産群は、宗像三女神を祀る宗像大社を中心とした信仰と、宗像氏にまつわる史跡・文化財で構成されています。自然崇拝を起源とする固有の信仰と祭祀が、4世紀から現代まで継続されている点が特徴です。

構成資産

この遺産群は、以下の主要な構成資産から成り立っています。

宗像市

沖ノ島（宗像大社沖津宮）: 島全体が御神体であり、国の史跡に指定されています。また、島内には貴重な原始林が残り、天然記念物にも指定されています。「海の正倉院」とも呼ばれる沖ノ島からは、約8万点もの祭祀遺物が出土しており、これらは国宝に指定されています。
宗像大社中津宮（御嶽山祭祀遺跡を含む）: 大島に位置し、中津宮背後の御嶽山山頂には御嶽神社があります。その周辺で確認された祭祀遺跡も、構成資産に含まれています。祭祀遺跡は沖ノ島と同様の露天祭祀遺構です。
沖津宮遥拝所: 大島にあり、沖ノ島を遠くから拝むための施設です。
宗像大社辺津宮: 田島に位置し、本殿と拝殿は国の重要文化財に指定されています。境内にある高宮祭場には、沖ノ島や御嶽山と同様の露天祭祀遺構があります。

福津市

* 新原・奴山古墳群: 宗像氏に関わる古墳群で、「津屋崎古墳群」の一部です。国の史跡に指定されています。

その他の関連要素

遺産群の推薦にあたっては、完全性（インテグリティ）を確保するための法的保護措置が講じられています。文化財保護法に基づく構成資産の指定に加え、景観法や都市計画法による規制も適用されています。また、緩衝地帯として、神湊から大島、そして沖ノ島を結ぶ玄界灘が設定されており、海洋信仰の場としての重要性が考慮されています。

環境保全活動

この地域では、海の環境保全を目的とした「Save the Sea運動」が展開されています。地元企業との協賛による商品販売や、廃油を利用した手作り石鹸の製作など、地域住民が主体となった環境保護活動が活発に行われています。

世界遺産登録への道のり

2000年代初頭、地元住民による世界遺産登録に向けた運動が始まりました。当初は沖ノ島のみを対象としていましたが、その後関連する遺産群を含めた形で申請が行われました。世界遺産委員会の審議では、構成資産の範囲や名称を巡って議論が行われましたが、最終的には8件全ての構成資産が登録されることになりました。

世界遺産委員会での評価

世界遺産委員会では、この遺産群が古代東アジアの航海、交流、祭祀を示す重要な証拠であると評価されました。また、自然崇拝を根幹とする宗像信仰が、現代まで連綿と受け継がれている点も高く評価されました。

最新の研究成果

世界遺産登録後、この遺産群に関する研究がさらに進められています。自然崇拝と宗像信仰の関連性、古代東アジアの航海技術、交易の実態など、多岐にわたる研究成果が報告されています。これらの研究は、この遺産群が持つ文化的価値をより深く理解する上で重要な役割を果たしています。

ガイダンス施設

世界遺産条約に基づき、宗像大社に隣接する「海の道むなかた館」がガイダンス施設として改修されました。ここでは、遺産群に関する展示や情報提供が行われています。また、大島には「大島交流館」、福津市には「福津市複合文化センター歴史資料館」があります。

「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群は、古代からの信仰と自然が調和した、貴重な文化遺産です。その歴史的、文化的価値を理解することで、人類の過去と未来を結びつけることができるでしょう。

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