あだち勉

あだち勉の生涯と業績

あだち勉（あだち つとむ、1947年8月1日 - 2004年6月18日）は、日本を代表する漫画家の一人であり、特に弟のあだち充を育てた人物として知られています。群馬県伊勢崎市で生まれた彼の本名は安達勉であり、かつては「はいだちつとむ」というペンネームで活動をしていました。

漫画家としてのキャリアの始まり

あだちの漫画のキャリアは、高校生時代に貸本漫画誌への投稿から始まりました。その才能を見込まれ、早くも日の丸文庫の『QP』に寄稿することになります。高校卒業後、東京に上京し、広告会社でデザイナーとして働く一方、再び漫画家としての道を目指しました。その後『週刊少年サンデー』に短期連載された『タマガワ君』が評価され、赤塚不二夫の目に留まり、アシスタントとしてフジオ・プロダクションに参加します。

フジオプロでの活動

フジオプロでは、あだちは高井研一郎や古谷三敏とともに作画の要である下絵チーフを任されます。この時期、彼は赤塚不二夫の漫画制作スタイルの中核を担い、「アイデア会議」にも参加しました。しかし1981年ごろにフジオプロを退職し、弟のあだち充が成功していく中でマネージャー兼アシスタントとしての役割を果たします。

1982年にペンネームをあだち勉に改名した後も、多くの漫画作品を残し、その中には『実録あだち充物語』など、弟の充をテーマにしたものも含まれています。さらに、彼は日本初の「日曜漫画家」として書店を経営し、落語立川流にも入門し、「立川雀鬼」を名乗って活動しました。

私生活と性格

あだちの人柄は、弟・あだち充への深い愛情が特徴です。両親が漫画家になることに反対していた時、彼は弟を説得して上京させ、漫画家への道を切り開きました。兄弟仲は非常に良好で、あだち充からは「バカあんちゃん」と呼ばれて慕われていました。彼の性格は根暗でありながらも、ギャグ漫画を生きたような存在感を持ち、麻雀に強い遊び人としても知られています。

努力と多様な才能

あだち勉は、自身の画風にこだわる一方で、その幅広い技術と才能を生かして多彩な絵柄を使いこなしました。特に劇画風の作品でもそのセンスを発揮し、赤塚不二夫の作風を継承しつつ、独自のスタイルを構築しました。彼は弟子への指導や後進の支援にも熱心で、自身の経験を多くの漫画家に伝えました。

最期の時

2004年6月18日、あだちは胃癌により56歳でこの世を去りました。彼の入院先は、赤塚が先に入院していた順天堂大学医学部附属順天堂医院でした。彼の死は、漫画界に大きな喪失感をもたらしました。

代表的な作品

あだちの代表作には、初期の作品として『クフ王の墓』や『あばれ!!半平太参上』、ギャグ漫画としての『タマガワ君』や『ズッコケ飛っ太』などがあります。さらに『実録あだち充物語』は、兄としての視点から、充の成長を描いた作品として特に注目されます。

あだち勉の人生は、漫画だけでなく、弟の支えを通じて、漫画界全体に影響を与えたことが明らかです。彼の作品や人生からは、漫画の持つ力と兄弟愛の深さを感じることができるでしょう。

もう一度検索