あばれ花組

森伸一郎が原作、押山雄一が作画を手掛けたヤンキー漫画『あばれ花組』は、1987年から1992年まで集英社の『月刊少年ジャンプ』で連載されました。全19巻の単行本が刊行されており、現在はぶんか社より電子書籍版も配信されています。本作は、二人の主人公が過ごす中学3年間を、友情、抗争、そして成長の物語として描いています。

あらすじ

物語は、主人公である花咲青児（はなさきせいじ）と桜竜次（さくらりゅうじ）の中学校入学から始まります。この二人組は、いつしか周囲から「花組」と呼ばれるようになります。彼らは、池名井中学校（通称：池中）を舞台に、様々なライバル、組織、そして個性豊かな仲間や教師たちと関わりながら、波乱に満ちた3年間を駆け抜けていきます。

主な登場人物

花組

花咲青児: 中学1年時は6組、2年時はF組。桜竜次と共に「花組」と呼ばれる。全国的なチビッ子剣道大会で優勝経験を持つ実力者。一度は剣道を離れるも、愛原瞳の入部を知り剣道部へ戻る。どこか飄々として掴みどころがないが、仲間思いでいざという時には凄まじい力を発揮する。
桜竜次: 花咲青児とコンビを組むもう一人の主人公。中学1年時は6組、2年時はF組。全国チビッ子剣道大会準優勝の腕前。学校の「番長」の地位に強いこだわりを持ち、上昇志向が強い。同年代の流行歌には興味を示さず、浪曲を好むという渋い趣味を持つ。

池名井中学校（池中）の生徒たち

愛原瞳: 中学1年時は6組、2年時はA組。入学当初から花咲青児に惚れられる、成績優秀で心優しい優等生。剣道部に所属し、何かと騒動を起こす花組を理解し、庇うことが多い。
立花政子: 中学1年時は6組。愛原瞳の親友。父親の病院経営における脱税問題がきっかけで不良となり、一時期は暴走族WANTEDにも所属していた。
轟宗一: 花組の先輩。合唱部部長だが、校内では一目置かれる存在。一撃で黒板を破壊するほどの強烈な右パンチを持つ。錦城との抗争で左目に傷を負い、中学2年を留年している。
錦城拓也: 池名井中学3年時の実質的なトップ。暴走族WANTEDに所属し、校内で不正な物品を販売していた。ナイフを武器とするが、激怒した花咲に敗れる。
宍戸剛: 2年4組所属。柔道部一の猛者。錦城を倒した後、花組に挑むが桜とのタイマンに敗れる。
浜: 花組の幼馴染。万引きグループに加わっていたが、花組に諭されて足を洗うことを決意する。
泉谷茂雄: 花組の1学年下の後輩。地雷夜の初代総長・矢沢のバンド仲間でもある。入学早々、鉛を手に隠して桜を倒す実力を見せる。
橋本弘司: 花組の同級生。生徒会長の座を狙い、花組を陥れるため様々な策略を巡らす。学業優秀で薙刀の腕前もかなりのものだが、その卑劣な手口が露呈し、最終的には落ちぶれる。
梶井満: 花組の同級生で橋本弘司の友人。生徒会長選挙で橋本の参謀を務めるも、共に花組の策略に敗れる。
天誅組（二代目）: 池名井中学の1学年下の生徒たちで組織されたグループ。悪徳教師などに制裁を加える。初代リーダーの弟である剣崎や、現リーダー格の釜石らがいる。

池名井中学校の教師たち

鬼山: 剣道部顧問。全日本剣道選手権3位の実力者。当初は花組を問題視するが、彼らの本質を理解し、良き導き手となる。
沼田: 2年進級時に赴任した新任教師。過度な生活指導を行うが、花組との関わりで奇妙な行動に出るなど、どこか憎めない人物。
箱崎: 教務主任。生徒から没収した物品の横流しや、業者からの賄賂など、汚職に手を染めている。天誅組に制裁される。
大塚: 生徒を差別的に扱う教師。箱崎と同様に天誅組の標的となる。
島崎: 新任の女性教師。女子テニス部顧問。女子部員との間に不適切な関係を持ち、問題となる。

外部勢力

WANTED: 池名井中学周辺を拠点とする暴走族。総長の黒田や特攻隊長の川崎らが花組と激しい抗争を繰り広げる。
万引きグループ: 青嵐高校の生徒会長であり暴力団幹部の息子である真藤高志が支配する大規模な窃盗組織。浜も一時期所属していた。居合の達人である真藤をはじめ、四天王と呼ばれる幹部など、危険なメンバーが多い。
地雷夜: 約20校の中学校が加盟する大規模な番長連合組織。総勢500名以上のメンバーを擁し、地域に大きな影響力を持つ。初代総長の矢沢瑛司、正義感の強い三代目総長・丸菱勇治、地位を狙う副総長・松崎など、様々な人物が登場し、組織内の権力争いも描かれる。
鯱: 地雷夜と敵対する組織。総長以外はスキンヘッドに揃いのジャンパーという異様な集団。ツボを突いて相手の動きを封じる総長・銀原らが花組や地雷夜と対立する。
武田工業: 近隣の高校生たちから慕われる存在である織田が所属。桜竜次が人間的な目標とする人物。
* S大学空手部: 桜の親戚が経営する温泉の地上げに関与するが、あっけなく失敗に終わる。

作品の魅力

『あばれ花組』は、血の気の多いヤンキーたちの抗争を主軸としながらも、主人公である花組の固い友情、仲間との絆、そして社会的な問題（学校内の腐敗、地上げなど）に切り込む意外な側面も持ち合わせています。熱い喧嘩シーンはもちろんのこと、個性豊かなキャラクターたちが織りなす人間ドラマや、時にはコミカルな描写も魅力です。主人公二人の、不良でありながら剣道の達人であるというギャップや、浪曲好きという桜の意外な趣味なども、読者に強い印象を与えます。

主人公たちの成長と、彼らを取り巻く様々な人々の生き様が描かれた、読み応えのある青春群像劇と言えるでしょう。

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