あまく危険な香り

山下達郎 シングル「あまく危険な香り」詳細解説

1982年4月5日、山下達郎の9枚目のシングル「あまく危険な香り」がリリースされました。TBS系列の同名ドラマの主題歌として書き下ろされたこの楽曲は、山下達郎のキャリアにおいて重要な位置を占める作品です。

まず特筆すべきは、このシングルが山下達郎がRCA/AIRレーベルに所属していた最後の作品であったということです。そのため、ベストアルバム『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』にのみ収録され、長らく入手困難なシングルとなりました。その後、リマスター盤『FOR YOU』のボーナス・トラックとして収録されたことで、改めて多くのファンに聴かれる機会が増えました。

『FOR YOU』には、「あまく危険な香り」に加え、ドラマのタイトルバック用として制作されたピアノインストゥルメンタルと、BGM用に録音されたロングヴァージョンのインストゥルメンタルの2タイプが収録されています。これらのインストゥルメンタルは、楽曲の繊細なメロディーラインとアレンジの巧みさを際立たせており、別次元の魅力を聴かせてくれます。

さらに、「RIDE ON TIME」のCDシングル再リリースの際にカップリング曲として収録された他、新たなリミックスによるカラオケバージョンも制作されました。「あまく危険な香り」はライブアルバム『JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–』にもライブバージョンで収録されており、ライブパフォーマンスにおける魅力も堪能できます。また、オールタイムベスト『OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜』にも収録され、彼の代表曲として現在も高い人気を誇っています。

楽曲制作に関して、山下達郎自身は当初、ベテランシンガーに歌ってもらうことを意図していたと語っています。しかし、ディレクターの小杉理宇造氏の勧めで、自ら歌うことになったそうです。間奏の低音ピアノフレーズなど、それまでの山下達郎作品にはないアダルトな雰囲気は、新鮮な驚きを与え、多くのリスナーを魅了しました。

しばしばカーティス・メイフィールドの「TRIPPING OUT」との類似性が指摘されますが、山下達郎は自身のラジオ番組で、RSO時代のカーティス・メイフィールドの作品をあまり好んでおらず、「あまく危険な香り」のレコーディング当時「TRIPPING OUT」を聴いたことがなかったと発言しています。リズムパターンは確かに似ているものの、決してパクリではなく、むしろこれほど似たオケが作れたことを評価してほしいとコメントしています。

カップリング曲の「MUSIC BOOK」は、アルバム『FOR YOU』からのシングルカットです。この楽曲は、吉田美奈子がノートに書き留めていた「ミュージック・ブック」という一節からインスピレーションを得て制作されたとされています。

シングルジャケットは鈴木英人のイラストが使用され、裏面には歌詞と『FOR YOU』のアルバム広告が掲載されています。全体を通して、80年代特有の洗練された雰囲気と、山下達郎の音楽的才能が凝縮されたシングルと言えるでしょう。現在でも色褪せることのない名曲として、多くのリスナーに愛され続けています。

収録曲

SIDE A: あまく危険な香り (3:21)
SIDE B: MUSIC BOOK (5:08)

収録アルバム

GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA
FOR YOU
JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜

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