あゝ野麦峠 (1979年の映画)

あゝ野麦峠

『あゝ野麦峠』は、1979年に公開された日本映画で、原作は山本茂実による1968年のノンフィクション作品です。本作は、過酷な労働を強いられる少女の姿を描き、多くの観客の心をつかむことに成功しました。

映画の概要

この映画は、1979年の邦画配給収入ランキングで第2位となったばかりか、キネマ旬報ベストテンでも9位にランクインしました。監督は山本薩夫、主なキャストには大竹しのぶが政井みね役を演じ、その他にも多くの若手女優が共演しました。作品は同年の6月に全国公開され、特にその抒情的な主題歌や内容の重厚さが話題となり、社会派映画としての地位を確立しました。

あらすじ

物語は20世紀初頭、岐阜県と長野県の境に位置する「野麦峠」を舞台に展開されます。ヒロインの政井みね（大竹しのぶ）は、13歳の少女。この家族は貧しく、父母と二人の兄、さらに小さな4人の弟妹がいます。家計を助けるため、みねは寒村から長野県の岡谷市にある製糸工場で働くことを決意します。

彼女の仕事は「糸取り」と呼ばれる繭を煮る作業で、労働は非常に困難でした。早朝4時半に起床し、洗顔やトイレを済ませた後、朝の労働が始まります。朝食はわずか10分で済ませ、昼食も立ち食いで10分ほど。みねは昼間に約15時間働き続けるのです。工場内は気温が40度を超える蒸し風呂状態で、結核菌にとっては絶好の環境となっていました。

悩ましい日々が続く中、みね自身も結核に感染し、重度の髄膜炎にかかってしまいます。医療を受けることができず、隔離されてしまった彼女は、兄の辰次郎（地井武男）に背負われて郷里に戻る途中、最後の時を迎えます。

キャスト

映画には大竹しのぶの他にも数多くの実力派俳優が出演しています。三國連太郎、原田美枝子、友里千賀子などが名を連ね、作品の深みを増していました。また、ナレーションは鈴木瑞穂が務め、物語の雰囲気を一層引き立たせています。

制作の背景

『あゝ野麦峠』の映画化は、1969年に内田吐夢監督、吉永小百合主演での計画があったものの、資金面での懸念から断念されました。しかし、持丸寛二が約4億円という大金を出資し、東宝が配給へと進展しました。このようにして、作品は公開される運命となったのです。

興行成績と評価

本作は、当初の興行成績に対する不安を裏切り、14億円という驚異的な収入を記録しました。また、岐阜県飛騨地方の工女たちに共感する視点からも多くの支持を得ることができ、全国各地でのロングラン上映が行われました。さらに、多面的な視覚を提供するため、関連資料も数多く展示された資料館が設けられました。

受賞歴

この映画は、多数の映画賞を受賞しており、特に音楽や撮影、美術に関して高く評価されています。また、テレビ放映に関しても当時のルールを超えて販売された経緯があり、公開後に視聴率34.3%を記録するなど、多くの人々に影響を与えました。

映画『あゝ野麦峠』は、単なる娯楽としての域を超え、日本社会の背景に存在した問題を鋭く描写する作品となりました。観客に深い感動を与えた本作は、今もなお、多くの人々に語り継がれています。

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