いすゞ・アセンダー

アセンダー（Ascender）

アセンダーは、日本の自動車メーカーであるいすゞ自動車が、主に北米市場で展開していた中型から大型のスポーツユーティリティビークル（SUV）です。このモデルは、いすゞが独自に開発・生産したものではなく、ゼネラルモーターズ（GM）からOEM（相手先ブランド製造）供給を受けて販売されていました。ベースとなったのは、GMのGMCブランドで販売されていたエンボイ（Envoy）というSUVです。

開発背景と市場投入

アセンダーの歴史は、2003年モデルイヤーから始まりました。最初に市場に投入されたのは、3列シートを備えた7人乗り仕様でした。このモデルは、北米市場におけるいすゞの主力SUVとして長年親しまれてきたトルーパー（日本名：ビッグホーン）の後継車種としての役割を担うことになりました。

その後、2005年モデルイヤーからは、よりコンパクトな2列シートの5人乗り仕様がラインナップに追加されました。こちらのモデルは、同じくいすゞのSUVであったロデオ（日本名：ウィザード）やアクシオムの後継として位置づけられました。

販売地域については、主にアメリカ合衆国を対象としていました。当時のいすゞは、カナダ市場からの撤退を進めていた時期にあたり、アセンダーがカナダ国内で正規に販売されることはありませんでした。

OEM供給と生産体制

前述の通り、アセンダーはGMCエンボイのOEMモデルとして誕生しました。車両の開発や設計はGM主導で行われ、生産もGMの工場で行われていました。

具体的には、7人乗り仕様はオクラホマ州オクラホマシティにあるGMの組立工場で生産されていました。一方、2005年に追加された5人乗り仕様は、オハイオ州モレーンにあるGMの工場で製造されていました。しかし、オクラホマシティ工場は後に閉鎖されたため、そこで生産されていた7人乗りモデルは2006年モデル限りで生産を終え、ラインナップから姿を消しました。

エンジンラインナップ

アセンダーに搭載されたエンジンは、主に2種類が設定されました。

4.2L 直列6気筒エンジン: ベースグレードなどに搭載された、パワフルかつ扱いやすい直列6気筒エンジン。
5.3L V型8気筒エンジン: より大きなパワーを求める顧客向けに設定されたV型8気筒エンジン。このV8エンジンには、2005年モデルから特定の走行条件下で一部の気筒を休止させることで燃費効率を高めるアクティブフューエルマネジメント（気筒休止機構）が採用されました。

生産終了とその理由

アセンダーの生産期間は比較的短命に終わりました。いすゞ自動車は、世界的な経営戦略の見直しを進める中で、北米市場におけるピックアップトラックやSUVといったライトトラック事業からの全面撤退を決定しました。

この事業撤退に伴い、アセンダーの生産も終了することが決定され、最終的に2008年6月6日に生産ラインが停止されました。これにより、アセンダーはいすゞが北米市場で展開した最後のSUVの一つとなりました。

関連車両

アセンダーはGMの「GMT360」プラットフォームを共有する多くの兄弟車が存在しました。主な関連車両としては、ベースとなったGMCエンボイのほか、シボレー・トレイルブレイザーなどが挙げられます。

短い販売期間ながらも、いすゞの北米におけるSUVラインナップを補完するモデルとして存在したアセンダーは、OEM戦略とその後の事業撤退という、当時のいすゞを取り巻く状況を象徴する一台と言えるでしょう。

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