いすゞ・117クーペ

117クーペの概要

117クーペ（117Coupe）は、いすゞ自動車が1968年から生産していた小型4座クーペです。長年にわたり、日本の自動車史に名を刻む名車として特に1970年の日本車の象徴となる存在であり、この車のデザインや技術的な特色は非常に高い評価を得ています。117という車名は、開発時のコードネームから取られたものです。

デザインとスタイル

この車の外観は非常に流麗で、1960年代中頃のイタリアの自動車デザインを彷彿とさせます。前後のホイールアーチに繊細に流れるフェンダーラインは、当時のイタリアンデザインの特徴的なスタイルに深く根ざしており、同時期のフィアット・ディーノ・クーペに似た印象を与えます。デザインはカロッツェリア・ギアに発注され、著名なデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロの手によって完成されました。117クーペのボディには、特に大きなグラスエリアや細いピラー、ユニークなウィンドウガーニッシュなどが見受けられ、非常に洗練された印象を与えます。

メカニズム

117クーペは後輪駆動で、水冷直列4気筒エンジンが搭載されています。エンジンの選択肢には1.6L、1.8L、及び2.0LのDOHC（ダブルオーバーヘッドカムシャフト）やSOHC（シングルオーバーヘッドカムシャフト）があり、後期には2.2Lのディーゼルモデルも少数生産されました。この車両に装備されたサスペンションは、フローリアンのシャーシを元にしており、実用的かつ信頼性の高い設計がなされています。最初のモデルでは4速MTが搭載され、後に5速MTへの変更と共に3速ATも選択できるようになりました。

歴史と生産

117クーペの初販売は1968年12月であり、いすゞ自動車は当初、117スポルトというコンセプトカーを元にしたこの車の生産を決定しました。製造過程は極めて手作業に依存し、初期型の多数は「ハンドメイド」と呼ばれる特異な位置づけを持ちました。生産台数は月に30～50台と制約があり、高価な価格設定も影響し、希少性はその名声を高める要因となりました。

1973年からは、ゼネラルモーターズとの提携を経て、技術的な進化や機械化の進展により量産化が行われることになりました。117クーペは、特にエンジンにおいて電子制御燃料噴射装置の初搭載車の一つとして、日本の自動車産業において重要な役割を果たしました。

人気と影響

117クーペは発売から10年後にも登録台数の約98%が現役という驚異的な耐久性を示し、総生産台数は85,549台と制限がありますが、現在でも多くの旧車愛好家達に支持されています。この車のデザインと技術は時代を超えて評価され続け、多くのクラシックカーイベントにおいてその存在感を示しています。

派生モデル

117クーペには117クルーザーと呼ばれるスポーツワゴンの試作車が存在しましたが、正式な市販には至りませんでした。しかし、117クーペの影響は新たなモデルや自動車デザインに引き継がれ、いすゞの後継車ピアッツァにもその伝統が生かされています。

まとめ

117クーペは、その洗練されたデザインと先進的な技術により、日本車の中でも特に愛され続ける名車の一つです。エポックメイキングなモデルとして、自動車史の中でも重要な位置を確保しています。

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