いつか どこかで (映画)

映画『いつか どこかで』作品解説

『いつか どこかで』は、シンガーソングライター小田和正が1991年に製作し、1992年に公開された初の映画監督作品です。自身の音楽世界を映像で表現したいという長年の夢を実現させた作品であり、恋愛模様とリゾート開発を巡る企業間の駆け引きを織り交ぜたストーリーが展開されます。

制作の背景

小田和正が映画制作を意識したのは、中学生時代に観た映画『ティファニーで朝食を』の主題歌「ムーン・リバー」に感銘を受けたことがきっかけでした。オフコース時代から、楽曲のビデオクリップ制作など、音楽と映像を融合させた表現に意欲的に取り組んでおり、ソロ活動開始後は第一生命のCMで企画・演出・出演をこなすなど、映像制作への関心を深めていました。桑田佳祐監督の『稲村ジェーン』に刺激を受けたことも、映画制作への挑戦を後押しした要因の一つと言われています。

1991年は、小田和正のシングル『ラブ・ストーリーは突然に』が記録的な大ヒットとなった年でもあります。その勢いに乗じて、同年9月にクランクイン。北海道の豊頃町、湧洞沼、丹沢、神宮球場などがロケ地として使用されました。主要キャストには、時任三郎、藤原礼実、宅麻伸が起用され、音楽は小田和正自身が書き下ろし、1992年1月にアルバム『sometime somewhere』として発売されました。

ストーリー

橘建設に勤務する正木まもる（時任三郎）は、仕事と恋に悩み、傷心のままキャンプに出かけます。そこで心機一転、リゾート開発プロジェクトに参加した彼は、視察先の西の浦で美しい女性、小林冬子（藤原礼実）に出会い、一目で心を奪われます。しかし、彼女はライバル会社である新日本計画のリゾート開発プロジェクトのチーフであり、二人は競合する立場にありました。

互いの会社のスパイ合戦に巻き込まれながらも、正木は冬子への想いを募らせます。やがて二人は惹かれあうものの、様々な障害が立ちはだかります。企業の陰謀、裏切り、そして事故。それらを乗り越え、最後にはお互いの気持ちを確かめ合い、新たな一歩を踏み出すというストーリーです。

キャスト

正木まもる：時任三郎
小林冬子：藤原礼実
佐藤瞳：宅麻伸
真奈美：中村久美
片桐真：小木茂光
江原：岡田真澄
北沢：津川雅彦

評価とその後

1992年2月に全国東宝系で公開されましたが、映画評論家からは厳しい評価を受け、興行的にも成功とは言えませんでした。しかし、この経験を活かし、5年後の1997年には2作目の映画『緑の街』を製作しました。

現在の状況

1992年11月20日にVHSが発売されましたが、現在に至るまでDVD化はされていません。1997年1月には、フジテレビで再編集版（ディレクターズ・カット）が放送されました。

映画が描くもの

『いつか どこかで』は、大人の恋の難しさや、仕事における葛藤、そして再生を描いた作品です。小田和正の音楽が、映像と一体となって、登場人物たちの心情を繊細に表現しています。映画評論家からの評価は高くありませんでしたが、小田和正の世界観が色濃く反映された作品として、現在でも一部のファンから支持されています。

関連情報

アルバム『sometime somewhere』
* 映画『緑の街』

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