いつか王子様が

いつか王子様が：ディズニー映画からジャズスタンダードへ

1937年公開のウォルト・ディズニー・アニメーション映画『白雪姫』の挿入歌「いつか王子様が（Someday My Prince Will Come）」は、映画音楽史に名を刻む名曲です。作詞はラリー・モリー、作曲はフランク・チャーチルが担当し、白雪姫の声優を務めたアドリアナ・カセロッティによって歌われました。

映画本編では、白雪姫が小人たちと過ごす場面、パイを焼く場面、そして王子と再会する場面などで使用され、物語に深みを与えています。特に、小人たちから芸をせがまれた白雪姫が、ある若者への淡い恋心を歌い上げるシーンは、聴く者の心を掴みます。

その人気はディズニー作品にとどまらず、アメリカン・フィルム・インスティチュートによる映画史上の偉大な100曲リストにおいて19位にランクインするなど、広く認められています。ディズニー映画の楽曲としては、『ピノキオ』の「星に願いを」に次ぐ2位という評価を得ています。

ジャズミュージシャンに愛された旋律

「いつか王子様が」は、ジャズ界でも高い評価を受け、数多くのジャズミュージシャンによって演奏、録音されてきました。

1956年には、当時無名だったジョン・ウィリアムズがアルバムに収録。その後、1957年にはデイヴ・ブルーベックが『デイヴ・ディグズ・ディズニー』でカヴァーし、これが有名ジャズミュージシャンによる初の録音とされています。

この楽曲の人気の秘密は、その洗練されたコード進行にあります。魅力的なメロディーとコード進行は、ジャズミュージシャンたちの創造性を刺激し、ビル・エヴァンス、マイルス・デイヴィス、オスカー・ピーターソンといった巨匠たちが独自の解釈で演奏するようになりました。

特に、1961年のマイルス・デイヴィスによるアルバム『サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム』は有名です。このアルバムでは、コーラス中の持続低音の間奏曲が特徴的で、多くのミュージシャンに影響を与えました。ウィントン・ケリーはデイヴィスのバージョンを演奏し、後に自身のアルバムでもトリオバージョンを録音しています。

ビル・エヴァンスは生涯にわたり何度もこの曲を録音しており、三拍子と四拍子を巧みに織り交ぜたアレンジも存在します。レナ・ホーン、チェット・ベイカー、サン・ラー、カサンドラ・ウィルソン、スタンリー・クラークなど、多くのジャズミュージシャンがそれぞれのスタイルで「いつか王子様が」に新たな息を吹き込みました。

ポップスシーンにおけるカヴァー

ジャズ界のみならず、ポップス界でも「いつか王子様が」は広く愛されています。

ダイアナ・ロス＆ザ・スプリームス、パトリシア・パーイ、シネイド・オコナー、タニヤ・タッカー、バーブラ・ストライサンドなど、多くのポップス歌手がカヴァーしています。日本では、浜崎あゆみがCMソングとして、押尾コータローがインストゥルメンタルでカヴァーするなど、幅広いアーティストに愛されていることが分かります。

アナスタシア、ジュリー・アンドリュース、アシュレイ・ティスデイル、チーター・ガールズ、青山テルマ、ティファニー・ソーントン、BiS、JUJUなど、多くのアーティストがそれぞれの個性を活かした解釈でこの曲を歌い継いでいます。

このように、「いつか王子様が」は、ディズニー映画の挿入歌として誕生してから、ジャズ、ポップスといった様々な音楽ジャンルに影響を与え、世代を超えて愛され続ける名曲であると言えるでしょう。その普遍的な魅力は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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