いのち (漫画)

いのち

『いのち』は、ももち麗子による日本の漫画作品です。『デザート』（講談社）にて2008年9月号から2010年8月号まで連載され、KCデザートより全5巻の単行本が刊行されました。本作は、これまでの問題提起シリーズとは異なり、一人の少女が運命に翻弄される姿を描いた作品です。

あらすじ

主人公は、明るく活発なのばらと、大人しい性格の双子の姉ことり。幼い頃、父親がのばらを助けようとして亡くなったことがきっかけで、母・夏子との間に溝ができてしまいます。のばらは祖母の家で暮らし始め、姉妹は別々の道を歩むことになります。

高校生になったのばらは、母親恋しさから、時折ことりと入れ替わって母親の家へ行くようになります。ある日、母親から3人で一緒に暮らしたいと告げられ喜んだのも束の間、入れ替わっていたことりが何者かに殺害されるという悲劇が起こります。

事件後、のばらはことりとして生きることを決意します。殺されたのはのばらだと誤認されたため、母親はショックで記憶を失ってしまったのです。姉を死なせてしまった罪悪感と、母親を支えたいという思いから、のばらは真実を隠し、姉として生きていくことを選びます。恋人の優羽は唯一その事実に気づきますが、のばらを説得され、秘密を守ることを約束します。

程なくして、ことりを殺害した犯人として五刀田学が逮捕されます。しかし、裁判では五刀田の覚せい剤使用が争点となり、責任能力なしと判断され無罪となります。それを知ったのばらは、五刀田への復讐を決意しますが、彼は行方をくらましてしまいます。

3年後、のばらは街中で五刀田の免許証を拾います。免許証の住所を訪ねると、そこには親友の姫乃と、彼女の恋人村瀬が住んでいました。のばらは、村瀬が五刀田ではないかと疑い始めますが、村瀬は別人だと判明し、手がかりを失ってしまいます。

そんな中、姫乃が交通事故に遭い流産してしまいます。病院で姫乃の父親と出会ったのばらは、姫乃の荷物を整理するため村瀬のアパートを訪れます。そこで、ことりが殺害される瞬間が記録されたDVDを発見し、村瀬が五刀田本人であることを知ります。

事件の真相を知ったのばらは、DVDを証拠として警察に提出しようとしますが、「一事不再理」の原則により、五刀田の再逮捕は不可能だと告げられます。絶望したのばらは、自らの手で復讐することを決意します。

村瀬を追い詰めたのばらですが、彼を殺すのではなく、殺人罪で再逮捕させるために、自分が殺されたように偽装することを計画します。計画は成功し、村瀬は逮捕されますが、のばらは重傷を負い意識不明となってしまいます。

のばらの真意に気づいた優羽は、のばらの復讐を遂げさせることを決意し、警察の事情聴取で嘘の証言をします。そして、ことり殺害事件の真相が明るみになり、村瀬は実刑判決を受けることになります。

意識を失っていたのばらは、夢の中でことりと再会し、生きる力を取り戻します。5年後、のばらは優羽と共に介護の仕事に就き、命の尊さを改めて実感するのでした。

登場人物

鈴木のばら: 主人公。明るく活発な性格。姉の死後、ことりとして生きることを決意し、復讐を誓う。
鈴木ことり: のばらの双子の姉。大人しい性格。のばらと入れ替わっている最中に殺害される。
鈴木夏子: のばらとことりの母親。夫の死後、のばらと疎遠になる。ことり殺害事件後、記憶を失う。
優羽: のばらの恋人。のばらがことりと入れ替わっていることを知る唯一の人物。のばらの復讐を支える。
姫乃: のばらの親友。村瀬（五刀田）と交際している。
五刀田学（村瀬学）: ことりを殺害した犯人。偽証により無罪となるが、後にのばらに正体を暴かれる。

本作のテーマ

『いのち』は、単なる復讐劇ではなく、家族の絆、命の尊さ、そして司法制度の問題点にまで踏み込んだ作品です。登場人物たちの苦悩や葛藤を通して、読者に様々な問いを投げかけます。

書誌情報

ももち麗子 『いのち』 講談社〈KCデザート〉、全5巻
2008年12月12日発売、ISBN 978-4-06-365536-0
2009年5月13日発売、ISBN 978-4-06-365552-0
2009年11月13日発売、ISBN 978-4-06-365578-0
2010年4月13日発売、ISBN 978-4-06-365596-4
2010年9月13日発売、ISBN 978-4-06-365617-6

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