うしかい座タウ星

うしかい座τ星（タウ・ブーティス）は、うしかい座に位置する連星系で、地球から約51光年の距離にあります。肉眼でも観測可能な4.5等級の明るさを持つこの星系は、主星であるうしかい座τ星Aと、伴星のうしかい座τ星Bから構成されています。

うしかい座τ星A

主星のうしかい座τ星Aは、スペクトル型がF7Vの黄白色の主系列星です。質量は太陽の約1.2倍、直径は約1.9倍と、太陽よりも大きく、明るく輝いています。年齢は約13億歳と推定されており、太陽よりも重いため、寿命は約60億年と短くなると考えられています。

この恒星の周囲には、1997年に系外惑星「うしかい座τ星b」が発見されました。この惑星は、公転周期と恒星の自転周期が同期しているという珍しい特徴を持ち、このような現象が確認された最初の惑星となりました。この惑星は、かに座55番星bやアンドロメダ座υ星bと同時期に発見され、当時「ペガスス座51番星型惑星」と呼ばれていました。現在では、これらの惑星はホット・ジュピターまたはウォーム・ジュピターとして分類されています。

連星の伴星Bの重力的な影響により、主星Aから4.38AU以遠の軌道にある惑星は、安定した軌道を維持できないと計算されています。一方で、主星Aのハビタブルゾーンは1.92AUから3.30AUの範囲にあると考えられており、伴星Bの重力的な影響を受けながらも、ハビタブル惑星が存在する可能性も示唆されています。

うしかい座τ星B

うしかい座τ星Bは、スペクトル型がM2Vの赤色矮星です。主星Aから約240AU離れた距離を、約1000年かけて公転しています。この星の軌道離心率は0.92と非常に大きく、主星Aとの近点距離は約20AUとなります。この連星系の運動により、惑星が安定して存在できる領域は、それぞれの恒星に非常に近い領域か、連星系の重心から十分に離れた領域に限られます。

主星Aの重力的な影響により、伴星Bから7.21AU以遠の軌道にある惑星は、安定した軌道を維持できないと計算されています。一方で、伴星Bのハビタブルゾーンは0.19AUから0.33AUの範囲にあると考えられており、主星Aの影響を受けながらも、ハビタブル惑星が存在する可能性も残されています。

名称

中国では、うしかい座τ星は「右摂提二」と呼ばれ、η星とυ星と共に、星官「右摂提」を構成しています。

2015年、国際[[天文学連合]]によって、うしかい座τ星の惑星系を含む20の系外惑星系の固有名が公募されました。τ星系では、インドのグループが提案した「Shri Ram Matt」（恒星A）と「Bhagavatidevi」（惑星b）が圧倒的な得票数で1位となりました。しかし、これらの名称はインドの社会思想家とその妻に由来しており、国際[[天文学連合]]が定める「政治的・軍事的・宗教的な活動で知られる個人・場所・事件の名前は禁止」というルールに反していたため、投票は無効となりました。この投票では、ルールに違反する提案がいくつかありましたが、他の系外惑星系では名称が変更されたり、類義語が採用されたりして承認されました。投票自体が無効となったのは、この星系のみです。

2019年の系外惑星命名キャンペーンでは、うしかい座τ星系は対象となりませんでした。

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