かに座55番星

かに座55番星：太陽系近傍の多惑星系

かに座55番星は、地球から約41光年離れたかに座にある連星系です。主星であるかに座55番星Aは、太陽によく似たG型主系列星で、伴星のかに座55番星Bは赤色矮星です。2つの星の間の距離は1000天文単位以上と非常に離れており、それぞれ独立した系として存在していると考えられます。

かに座55番星Aの性質

かに座55番星Aは、太陽と比較すると、半径、質量、表面温度がやや小さく、光度も6～7割程度です。しかし、太陽よりも多くの重元素を含んでおり、特に鉄の含有量は太陽の1.86倍にも達します。このため、金属元素が豊富な恒星であるSMR（Super Metal Rich）に分類されます。金属量の多さから、恒星の年齢や質量の推定は困難ですが、彩層活動の研究から、約55億歳と推定されています。

この高い金属量については、原始惑星系円盤から重元素が恒星の大気に降り積もったという仮説が提唱されています。このメカニズムによって、恒星表面が重元素で「汚染」され、見かけ上多くの重元素を含む星になる可能性があります。

サブミリ波観測では、かに座55番星Aの周囲にダスト円盤は見つかっていません。ただし、小惑星帯やエッジワース・カイパーベルトのような小天体群が存在する可能性は否定されていません。

かに座55番星Bの性質

かに座55番星Bは、かに座55番星Aから1065天文単位離れた位置にある赤色矮星です。主星からの距離は大きいが、固有運動が共通していることから、重力で束縛された伴星であると考えられています。可能性として、かに座55番星B自体が連星系であるという説も存在しますが、現時点では確定していません。

5つの太陽系外惑星

かに座55番星Aの周囲には、現在5つの太陽系外惑星が確認されています。これらの惑星は、主星の視線速度の変化を精密に測定することで発見されました。

かに座55番星b (Galileo): 公転周期約14.7日、質量は木星の約0.78倍。高温の木星型惑星（ホットジュピター）です。
かに座55番星c (Brahe): 公転周期約43日。質量は木星の数倍と推定されています。
かに座55番星d (Lipperhey): 公転周期約11年、質量は木星の約3.8倍。
かに座55番星e (Janssen): 公転周期約2.8日、質量は海王星程度。巨大な岩石惑星または小型のガス惑星と考えられています。
* かに座55番星f (Harriot): 公転周期約260日、質量は土星の約半分。ハビタブルゾーンに位置し、生命存在の可能性も議論されています。

これらの惑星の軌道は、ほぼ同一平面上に存在すると考えられています。当初、惑星eの存在については議論がありましたが、後に確認されました。また、視線速度法だけでは惑星の質量の下限しか求められませんが、ハッブル宇宙[[望遠鏡]]によるアストロメトリ観測により、質量のより正確な推定が可能となっています。

未発見の惑星

かに座55番星系には、さらに未発見の惑星が存在する可能性があります。惑星fとdの間、またはdの外側に、安定した軌道を持つ惑星が存在する可能性が示唆されており、様々な研究が続けられています。ティティウス・ボーデの法則に類似した法則を用いた予測も行われていますが、現時点では観測による裏付けはありません。

アクティブSETI

かに座55番星には、アクティブSETI（地球外知的生命体探査）の一環として、電波信号が送信されています。2003年に送信されたこの信号は、「コズミック・コール2」と名付けられ、約2044年にかに座55番星系に到着すると予測されています。

惑星名称

2015年に国際天文学連合によって、かに座55番星の主星と惑星に、著名な天文学者や発明家の名前が付けられました。

まとめ

かに座55番星は、太陽系近傍に位置する多惑星系として、活発に研究が続けられています。今後の観測によって、さらに多くの惑星が発見され、この星系の理解が深まることが期待されています。特に、ハビタブルゾーンに位置する惑星fの存在は、生命存在の可能性という点でも注目を集めています。

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