うしかい座タウ星b

うしかい座τ星bとは

うしかい座τ星bは、うしかい座τ星Aという恒星の周りを公転する太陽系外惑星です。この惑星は、1996年に発見された初期の系外惑星の一つで、地球から約50.9光年離れた場所に位置しています。

惑星のデータ

軌道

うしかい座τ星bは、うしかい座τ星Aの周りを約3日7時間で公転しています。これは非常に正確に測定されており、誤差はわずか±2秒です。驚くべきことに、恒星の自転周期もほぼ同じ3.31日であることが判明しており、惑星の公転周期と恒星の自転周期が一致しているという、非常に珍しい例として知られています。

軌道長半径は720万kmで、これは太陽と水星の距離の12%程度しかありません。軌道傾斜角は44.5度または47度、離心率は0.023とされています。

物理的性質

うしかい座τ星bは、質量が木星の5.7倍から5.95倍と推定される巨大な惑星で、木星型惑星に分類されます。発見当初はドップラー分光法によって下限質量しか分かっていませんでしたが、観測技術の進歩により、正確な質量が測定されました。恒星に非常に近い軌道を公転しているため、表面温度は1377℃にも達するホット・ジュピターです。

通常、ホット・ジュピターの大気は高度が上昇するにつれて温度が上がる「温度逆転」という現象がみられますが、うしかい座τ星bの大気では、高度が上がるにつれて温度が下がることが観測によって明らかになっています。

観測の歴史

うしかい座τ星bは、1996年にジェフリー・マーシーらの研究チームによって発見されました。1999年には、太陽系外惑星として初めて直接観測されたと発表されましたが、これは後に撤回されました。実際に直接観測されたのは、2008年のHR 8799系の惑星やフォーマルハウトbなどです。

2012年、VLT(Very Large Telescope)による観測で、うしかい座τ星Aの光の中から、うしかい座τ星bが反射した光だけを抜き出して測定することに成功しました。これにより、正確な質量や軌道傾斜角、大気の性質などが判明しました。この観測で、うしかい座τ星bの反射光は、恒星の光のわずか0.01%しか含まれていないことが明らかになりました。

名称

bかAbか

うしかい座τ星Aには伴星のうしかい座τ星Bが存在するため、紛らわしさを避けるために、うしかい座τ星bがうしかい座τ星Aを公転していることを明確にする際には、「うしかい座τ星Ab」と表記されることがあります。しかし、混同の恐れがない場合には、単に「うしかい座τ星b」と表記されます。

ミレニアム惑星

発見発表が1999年12月という千年紀末だったため、うしかい座τ星bは「ミレニアム惑星」という愛称で呼ばれることもあります。

承認されなかった固有名

2015年、国際天文学連合による系外惑星の固有名公募が行われました。うしかい座τ星系には、インドのグループが提案した「Shri Ram Matt」（恒星）と「Bhagavatidevi」（惑星）が圧倒的な得票数で1位となりました。しかし、これらの名前がインドの社会思想家夫妻に由来することから、国際天文学連合のルールに反するとして、投票は無効となりました。

この投票では、他のルールに反する提案もいくつかありましたが、それらは変更や類義語での承認がなされました。投票自体が無効となったのは、うしかい座τ星系のみです。

2019年の命名キャンペーンには、うしかい座τ星系は対象となっていません。

まとめ

うしかい座τ星bは、その特異な軌道や大気の性質、そして固有名に関するエピソードなど、多くの興味深い特徴を持つ太陽系外惑星です。今後の観測によって、さらに詳しい情報が明らかになることが期待されます。

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