うるわしの宵の月

『うるわしの宵の月』は、やまもり三香による日本の漫画作品で、『デザート』（講談社）にて2020年9月号から連載されています。やまもり三香が『デザート』で執筆するのは本作が初であり、2021年11月10日からは『青い鳥文庫』（同社）にて小説版も刊行されています。

概要

本作は、少女[[漫画]]の王道とも言える恋愛模様を描きながらも、従来の固定観念にとらわれないキャラクター設定やストーリー展開が魅力です。

舞台

作中に登場する高校は履正社、カレー屋は下北沢の「NASU OYAJI CURRY」、市村の家は星野リゾート界遠州、第6話で登場する和菓子屋は神楽坂梅花亭、遊園地は花やしきがモデルとなっています。これらの実在する場所が、物語にリアリティを与えています。

あらすじ

主人公の滝口宵は、女性ながらに女子から「王子」と呼ばれ憧れの存在。しかし、宵自身は「王子」として見られることを必ずしも望んでいるわけではありませんでした。そんなある日、宵は同じ学校の先輩である市村と出会い、彼に男の子と間違えられたことがきっかけで、二人の関係が動き始めます。

酔っ払いに絡まれたアルバイト店員を助ける宵に遭遇した市村。その出会いを経て、市村に「お姫様抱っこ」をされた宵は、初めて女の子として扱われたことに戸惑いを覚えます。市村から好意を伝えられた宵は、彼のことが頭から離れなくなり、やがて二人は付き合うことに。しかし、市村から「進展がなければ意味がない」と指摘された宵は、自分からデートに誘うことを決意します。友人との会話を通じて「本気の恋」について考えた市村もまた、行動を起こし、二人の関係は深まっていきます。

登場人物

滝口宵（たきぐちよい）
本作の主人公。高校1年生で、女子から「王子」と呼ばれています。実家のカレー屋でアルバイトをしており、空手の経験もあります。甘党。
市村琥珀（いちむらこはく）
声 - 江口拓也
宵と同じ学校の先輩で、「もう一人の王子」として知られています。裕福な家庭で育ち、そのことが「王子」と呼ばれる理由の一つですが、本人はその状況に辟易しています。
利根のばら（とねのばら）
宵の中学時代からの友人。
日比谷寿（ひびやことぶき）
宵の中学時代からの友人。

制作背景

作者のやまもり三香は、当初「男の子がたくさん出てくる話」を構想していましたが、上手くまとめることができませんでした。担当編集者から「本当に描きたい話」を描くように提案されたことがきっかけで、「男の子っぽい女の子」というアイデアが生まれたといいます。最終回は既に構想済みであり、物語の途中の展開は、キャラクターを動かしながら執筆しているとのことです。

キャラクターについて

やまもり三香は、サバサバした性格の人物は恋愛に発展しにくいと考え、読者から共感を得やすく、恋愛へと話を進めやすいように、宵の内面を「女の子らしく」制作しました。また、感情を表に出さない宵が時折見せる女の子らしい表情を大切に描いています。

市村については、「気持ち悪いのちょい手前」くらいの人物像を目指し、ギリギリのラインを攻めているとのこと。精神年齢は30歳くらいをイメージしており、やまもり自身が得意なタイプではないキャラクターであるため、「この人、嫌だな」と考えながら描いているそうです。しかし、「カッコいい人とカッコいい人が付き合っているのっていい」というモチベーションで執筆に取り組んでいます。

評価

ライターの花森リドは、本作を「とびきり美しい者同士が恋をする少女マンガ」と評し、「ひとつひとつの過程にものすごいエネルギーが込められた作品」であると述べています。「ともに「王子」と呼ばれる者同士が他の誰にも見せたことのない表情を見せてゆく過程がたまらない」とも語っています。

UNISON SQUARE GARDENの田淵智也は、やまもり三香の作品について「人間関係に魅力がある」と感じており、本作について「なんとなくゴールが見えているキャラクター配置だからこそ、この先どうストーリーが転がっていくのか楽しみ」だとコメントしています。

受賞歴

『このマンガがすごい！2022』オンナ編 4位
第12回「ananマンガ大賞」準大賞
「マガデミー賞2021」主演女優賞（宵）ノミネート
第46回「講談社漫画賞」少女部門最終候補
「全国書店員が選んだおすすめ少女コミック2022」1位
『このマンガがすごい！2023』オンナ編 11位
第13回「ananマンガ大賞」準大賞
「ebookjapanマンガ大賞2023」大賞
* 第47回「講談社漫画賞」最終候補作品

商業的評価

TSUTAYAの週間単行本売り上げランキングでは、第1巻を除く全巻がランキング入りを果たし、第2巻は1位、第3巻は9位を獲得。2024年10月時点で、累計発行部数は440万部を突破しています。

『うるわしの宵の月』は、少女[[漫画]]の新たな可能性を示す作品として、今後ますます注目を集めることでしょう。

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