えりも丸 (2代)

えりも丸(2代目)：波乱に満ちたフェリーの一生

1989年、東京―苫小牧航路に就航したフェリー『えりも丸』（2代目）は、石川島播磨重工業東京第一工場で建造されました。同船は『しれとこ丸』の後継として就航し、東京発便では1時間15分、苫小牧発便では2時間もの航海時間短縮を実現しました。

当初は日本沿海フェリーが運航していましたが、1991年には同社がブルーハイウェイラインに社名変更。それに伴い、『えりも丸』は『さんふらわあ えりも』に改名され、塗装も変更されました。主に午前発の便に使用され、多くの乗客を運搬しました。

その後、1997年には大阪南港―志布志航路へ、1999年には再び北海道航路である苫小牧―大洗航路へ転配されました。2001年には同航路が商船三井フェリーに移管され、同社のもとで運航を続けました。しかし、2002年、苫小牧―大洗航路が東日本フェリーと共同運航体制となり、同航路にはより新しい船舶が投入されたことから、『さんふらわあ えりも』は引退することとなりました。

長い日本での航海を終えた『さんふらわあ えりも』は、長崎市のハヤシマリンカンパニーに売却され、『Ferry Cosmo 5』と改名。長崎湾で係船されました。その後、2004年にはシャトル・ハイウェイラインに売却され、『しゃとる よこすか』として横須賀港―大分港航路で活躍しましたが、2007年に運航は停止されました。

幾多の航路を経験した『しゃとる よこすか』は、さらに韓国のウェイドンフェリーに売却され、『New Golden Bridge IV』と改名。2009年には香港のGreat Dragon Shippingに売却され、『YONG XIA』と名を変えましたが、2019年にはスクラップとしてその生涯を終えました。

船内設備：快適な船旅のための工夫

『さんふらわあ えりも』の船内設備は、前船『しれとこ丸』と比べ、旅客定員を減らす代わりに、客室、レストラン、ラウンジなどの設備を充実させていました。模擬操舵装置も備えられ、乗客は船旅を存分に楽しむことができました。研修利用にも対応できるよう設計されていた点も特徴です。

Aデッキには特等客室、1等客室（A寝台から変更）、レストラン、ホール、バーコーナー、展望ラウンジ、シャワー室などが配置され、Bデッキには1等客室（A寝台から変更）、2等寝台（B寝台から変更）、2等客室、ドライバーズルーム、エントランスホール、案内所、売店、オーガナイザーズオフィス、展望浴場、ドライバーズ浴場、ゲームルーム、麻雀室、コインランドリーなどが設けられていました。

事故とインシデント：1991年の衝突事故

1991年7月21日、苫小牧港へ向かう途中、千葉県野島崎沖で貨物船『恵寿丸』と衝突するという事故が発生しました。『さんふらわあ えりも』は右舷中央部外板に凹傷と亀裂、恵寿丸は船首を損傷しました。事故原因は、濃霧による視界不良の中で、両船の運航が適切でなかったことと結論づけられました。

まとめ：海を渡り続けたフェリー

『えりも丸』は、日本各地の航路で活躍した後、海外へと渡り、その生涯を終えるまで幾多の船名と船籍変更を繰り返しました。その波乱に満ちた歴史は、日本のフェリー史における重要な一ページを刻んでいます。 長きにわたる活躍と、その後の転売、そして最終的なスクラップという結末は、船というものの儚さと、同時にその生命力を感じさせます。 この船が運んだ乗客や、携わった人々の記憶の中に、その名は長く生き続けることでしょう。

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