おがさわら丸 (3代)

おがさわら丸について

「おがさわら丸」は、小笠原海運が運行する貨客船で、東京都の東京港竹芝埠頭と小笠原村の父島二見港との間を結んでいます。2016年に就航したこの船は、在来型貨客船として日本国内で最も大きくて速い船舶です。本記事では、3代目となるおがさわら丸の特徴や歴史、設備など詳細に解説します。

船舶の概要

この船は、1997年に就航した2代目のおがさわら丸に替わり、三菱重工業下関造船所で建造されました。進水式は2016年1月27日に行われ、7月2日に正式に運航が開始されました。おがさわら丸の就航に合わせて、父島と母島を結ぶ「ははじま丸」も更新され、航路の充実が図られました。

元々、小笠原諸島航路には「スーパーライナーオガサワラ」というテクノスーパーライナー船が就航する計画がありましたが、原油価格の高騰により運航が頓挫しました。その後、2011年に小笠原諸島が世界遺産に登録され、航路の改善計画が進められた結果、在来型の貨客船としておがさわら丸が建造されることになったのです。

なお、一般には「父島行きのフェリー」として紹介されることもありますが、自走式自動車を積載できないため、厳密にはカーフェリーとは異なります。この船は、父島と母島の経済を支える重要な存在であり、多くの店舗はおがさわら丸の入港に合わせて営業を行っています。さらに、小笠原郵便局は船の出港日に合わせて臨時に郵便窓口を開設することもあります。

設計と性能

おがさわら丸のデザインは、前船に似ているものの、乗客定員を増やすためにデッキを1層増やし大型化しました。全長は150メートル、総トン数は11,000トンに達します。船首部分は垂直ステムが採用されており、外観上の特徴となっています。この設計は三菱重工業下関造船所によるものであり、以降の旅客船建造にも影響を与えました。

また、航海中の速力が1.3ノット向上し、片道約24時間での運航が可能です。省エネ船体と高効率なプロペラを採用することで、従来と同様の機関出力でありながら、運航コストが抑えられています。船体は8層からなっており、旅客区画は2-7デッキに分かれています。特にバリアフリー設計が考慮されており、介護室や多機能トイレ、車いす対応のエレベーターなどの設備が備わっています。

乗船設備とサービス

おがさわら丸の旅客定員は125名増加し、個室の数も増えました。2等寝台や2等和室などの宿泊施設には、プライバシーを考慮した設計が施されています。特等室には専用ラウンジが併設されており、マッサージチェアや飲料サーバーが提供されています。

船内には、レストランや展望ラウンジもあり、ICカードによる決済が可能です。案内放送は声優の中上育実が担当しており、乗客に快適な船旅を提供しています。

航路と寄港地

おがさわら丸は、東京港と父島の間を約24時間で運航しています。出港は東京11時、父島翌11時着、帰路は父島15時出港、東京翌15時着のダイヤで、繁忙期には臨時の寄港も行われます。横須賀や館山、伊豆大島、八丈島などに臨時寄港することもあります。これにより、各地域へのアクセスが向上しています。

クルーズと特別な航行

毎年6月には、父島や母島の住民や硫黄島にゆかりのある方々を対象とした墓参クルーズが実施されています。また、小笠原海運による各種クルーズも行われており、特別な体験を提供していますが、2021年および2022年は新型コロナウイルスの影響で運航が延期されました。

おがさわら丸は、単なる交通手段を超えて、地域経済を支え、島民と観光客をつなぐ重要な役割を果たしています。

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