おくどうご

フェリー『おくどうご』：瀬戸内海の航跡

1972年8月10日、愛媛阪神フェリーの神戸～今治航路に就航したフェリー『おくどうご』。来島どっく高知工場で建造された同社の第一船であり、その後の歴史において重要な役割を果たしました。細身で背の高い一本煙突が特徴的な船体は、就航地の道後温泉の風呂屋の煙突を思わせ、独特の存在感を放っていました。船内には岩風呂も備えられ、当時、同航路を運航していた他社と比較しても優れた設備を誇っていたと言われています。

就航当初は神戸～今治航路を運航していましたが、1973年4月、姉妹船『おくどうご2』の就航と同時にダイヤモンドフェリーに用船され、航路は神戸～松山～大分に変更されました。この航路では、フェリー『るびー』や『おくどうご2』とともに運航し、瀬戸内海を縦断する多くの乗客を運搬しました。

『おくどうご』は、特等室6名、一等室84名、特二等室180名、二等室780名と、様々なクラスの船室を備えていました。乗客の快適性を重視した設計は、当時としては画期的なものであったと言えるでしょう。

しかし、1982年12月、『おくどうご6』と『おくどうご8』の就航により、その役目を終え、引退することとなりました。『おくどうご2』と共にその歴史に幕を閉じ、その後は海外へ売船されました。

1983年、フィリピンに渡り、ネグロスナビゲーションによって『Santa Florentina』として新たな航海をスタートさせます。しかし、この第二の人生も長くは続かず、2006年11月、引退と共に解体されました。

『おくどうご』の生涯において、記憶に残る出来事として、1979年1月18日に発生した貨物船との衝突事故があります。神戸港から松山港へ向かう途中、瀬戸内海播磨灘で危険物運搬船『菱恭丸』と衝突。強い西風と高波の影響もあり、菱恭丸の操船ミスと、『おくどうご』側の衝突回避措置の不十分さが重なり、事故は避けられませんでした。『おくどうご』は左舷船尾に損傷を受けましたが、幸いにも人的被害はありませんでした。この事故は、海運における安全管理の重要性を改めて認識させるものとなりました。

『おくどうご』は、その存在期間を通して、多くの乗客を運び、瀬戸内海の海の物流に貢献しました。そして、その活躍は、多くの人の記憶の中に、航海の思い出として、あるいは、日本のフェリー史の一ページとして刻み込まれているのです。愛媛阪神フェリー、そしてダイヤモンドフェリーという二つの会社の顔として活躍した『おくどうご』。その短いながらも波乱に満ちた生涯は、日本のフェリーの歴史を語る上で重要な存在と言えるでしょう。

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