おとうと (1960年の映画)

映画『おとうと』の魅力と背景

1960年11月1日に公開された日本映画『おとうと』は、幸田文による同名小説を原作とし、脚本は水木洋子が務め、市川崑が監督を務めました。製作・配給は大映が行い、映画撮影には宮川一夫が関わり、映画初の銀残し手法を用いたことでも話題となりました。この映像技法によって独特の美しさが生み出されています。

受賞歴

『おとうと』は、公開後多くの賞を受賞し、日本映画界に大きな影響を与えました。キネマ旬報ベストワンをはじめとして、日本映画監督賞やスチール・コンテスト選出などの栄冠を得ました。さらに、毎日映画コンクールでは日本映画賞や監督賞、主演女優賞などの複数の部門で受賞しています。ブルーリボン賞でも作品賞を受賞し、技術賞や女優主演賞も手にしました。このような受賞歴は、作品の質の高さを証明しています。

制作背景

『おとうと』は、当初松竹での企画が考えられていましたが、最終的には東京映画に移りました。田坂具隆が監督予定でしたが、実現には至りませんでした。当初から原作に心を動かされていた市川崑が自らの手で映画化を進め、丁寧な製作が行われました。市川は、脚本の大部分を水木による原作に基づいて尊重し、映画化に向けて大映を説得するのに時間をかけました。また、映画の初めの部分については変更を行ったものの、基本的には原作の持つ意図を生かす形で製作された作品です。

撮影終了後、初の試写で音楽なしで終わるラストカットに対して、市川の妻で脚本家の和田夏十が異議を唱え、議論が生まれました。市川は「音楽なしで終わった方が、姉の孤独感や生命に対する勇気を示せる」と反論しましたが、和田は「音楽を入れることで映画らしい終わり方ができる」と主張しました。この結果、プロデューサーの協力を得て、音楽を追加することが決定され、ダビングを行い直しました。

ストーリー

物語の中心となるのは、小説家の娘であるげんと、彼女の弟で放蕩者の碧郎（へきろう）です。げんは、義母の冷淡な態度から、弟の世話を手厚く行います。碧郎は、外の世界に逃避するために様々ないたずらや窃盗にふけりますが、その行動は妹のげんをしばしば困惑させます。病気になった碧郎が再び回復できない状態となり、げんは危険を顧みず彼の傍らに寄り添う姿が描かれています。

キャスト

主演は岸惠子がげんを、川口浩が碧郎を演じています。さらに、田中絹代や森雅之といった実力派俳優も加わり、物語に厚みを与えています。この豪華なキャスト陣が作品に対する視聴者の期待を高める要素となっています。

映画の影響

1976年には、山根成之監督によってリメイクが行われ、さらなる注目を集めました。この作品は日本映画の中で特に影響を与えたものとして記憶されています。また、2010年には山田洋次が監督した『おとうと』が公開され、市川崑の作品にオマージュを捧げているシーンが見受けられました。

『おとうと』は、単なる映画に留まらず、日本の文化や映画技術の歴史的な意味合いを持つ作品として、今もなお多くの人々に親しまれています。

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