お姐ちゃん罷り通る

お姐ちゃん罷り通る

1959年に製作・公開された日本の劇映画です。当時の日本映画界で人気を博した「お姐ちゃんシリーズ」の第3弾にあたり、副題には英語で「3 Dolls Go to Hong-kong」（スリードールズゴートゥーホンコン）が付けられています。この作品は、団令子、中島そのみ、重山規子という、それぞれ異なる魅力を持つ三人の女優が主演を務めたことでも知られています。

概要と特徴

「お姐ちゃん罷り通る」の最大の特徴は、シリーズ全作品の中で唯一、海外でのロケーション撮影が行われた点にあります。舞台となったのは、当時イギリスの統治下にあった活気あふれる国際都市、香港です。この海外ロケは、当時の日本映画としてはまだ珍しく、作品に異国情緒とスケール感をもたらしました。主演の三人が香港で巻き起こす騒動や冒険が描かれることで、シリーズ本来のコメディタッチな作風に、旅情やサスペンスといった要素が加わり、見る者に新鮮な驚きを提供しました。香港の街並みや風俗がスクリーンに映し出されることで、当時のアジアの活気を感じ取ることができる貴重な映像資料としての側面も持ち合わせています。

シリーズにおける位置づけ

「お姐ちゃんシリーズ」は、時代の先端を行く明るくモダンな女性たちを主人公にしたコメディ作品群であり、当時の若い観客を中心に支持を得ていました。本作はシリーズ第3作として、それまでの国内を舞台にした物語から一歩踏み出し、海外という非日常的な設定を取り入れたことで、シリーズ全体の幅を広げた作品と言えます。主演の団令子は「パンチ」、中島そのみは「ピンチ」、重山規子は「センチ」といった愛称で親しまれ、それぞれが持つ個性を生かしたキャラクター造形は、本作においても健在です。三人の掛け合いや、異国の地でのドタバタ劇が見どころとなっています。

主なキャスト

本作には、主演の三人の女優に加え、当時の日本映画界を代表する多様な俳優陣が出演しています。

園江敏子（パンチ）：団令子
中原美津子（ピンチ）：中島そのみ
秋山重子（センチ）：重山規子
前原達夫：江原達怡
久保田浩：久保明
清川秀夫：山田真二
邱良漢：池部良
大神仁太：多々良純

香港側のキャストとして、丁紅、張沖、尤光照といった俳優も出演しており、当時の国際的な交流の一端も垣間見ることができます。また、高田稔、坪内美詠子、南道郎といったベテラン俳優たちが脇を固め、物語に深みを与えています。

「お姐ちゃん罷り通る」は、そのユニークな設定と、主演女優たちの魅力、そして当時の香港の情景が相まって、シリーズの中でも特筆すべき作品の一つとして記憶されています。

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