お座敷列車 (新潟鉄道管理局)

日本国有鉄道（国鉄）が多客期や団体旅行向けに開発・改造した特別な車両は「ジョイフルトレイン」と呼ばれ、全国各地で様々な車両が活躍しました。その中でも、伝統的な日本の旅館のような畳敷きの座席を備えた「和式客車」は、乗車すること自体が旅の目的となるような特別な空間を提供しました。「お座敷列車」（おざしきれっしゃ）は、国鉄新潟鉄道管理局が1981年（昭和56年）に導入した和式客車です。既存の12系客車を改造して誕生し、同じく12系から改造された和式客車としては、門司鉄道管理局や東京北鉄道管理局に登場したものに次いで3番目の存在でした。国鉄分割民営化を経てJR東日本に引き継がれ、2002年（平成14年）まで活躍しました。

誕生と初期編成

新潟地区への和式客車導入は、団体旅行需要に応えるために計画されました。1981年、大宮工場において、12系客車が本格的な畳敷きの客室を持つ車両へと生まれ変わりました。各車両には、新潟県や周辺地域の代表的な山々の名前にちなんだ愛称が付けられましたが、編成全体としての特別な愛称は当初ありませんでした。しかし、車両が国鉄末期からJR初期にかけて上沼垂運転区（現在の新潟車両センター）に配置されていたことから、鉄道ファンの間では同区の略号にちなんで「カヌ座」という通称で広く親しまれました。改造当初の編成は6両で構成されていました。

「サロン佐渡」組み込みと編成の変遷

1985年（昭和60年）になると、このお座敷列車は新たな変化を遂げます。新津工場で12系客車を改造して誕生した、洋風の内装を持つ展望室付き車両「サロン佐渡」が編成の中間に組み込まれ、7両編成となりました。これにより、和と洋、二つの異なる雰囲気を持つ空間を一つの列車で楽しめるようになりました。

JR東日本に継承された後、1988年（昭和63年）9月には、車両のイメージを一新するため外部塗装が変更されました。これまでの原形に近い塗装から、白地をベースにオレンジ色の濃淡ストライプを配した明るいデザインとなりました。この際、編成構成にも変更が加えられ、「サロン佐渡」と隣接する車両の連結順序が入れ替えられたほか、「サロン佐渡」を含む4両と、それ以外の3両とで分割して運用できるよう、一部車両に尾灯が追加されるなどの改造が行われました。

さらに1996年（平成8年）には、再び外部塗装が変更され、深緑色を基調とし、窓の上下に金色の帯を巻いた重厚感のある姿となりました。

1999年（平成11年）、元「サロンエクスプレス東京」の改造により余剰となった展望室付き車両オロ14 702がこの編成に組み込まれ、8両編成となりました。これは「サロン佐渡」に次ぐ2両目の洋風車両として連結されたものです。

車両編成（7両化後）

「サロン佐渡」が組み込まれ、7両編成となった時点での構成は以下の通りです。全車両がグリーン車扱いとして運用されました。いずれも種車は12系客車です。


*上記は1985年頃の編成です。1988年に4号車と3号車の連結位置が入れ替わりました。

車両構造

スロフ12形・オロ12形800番台の基本構造は、東京北鉄道管理局の和式客車「なごやか」に準じて設計されました。客室内は全面が畳敷きとなり、日本間の雰囲気でくつろげる空間となっていました。乗降扉は、スロフ12形ではトイレ側の扉が、オロ12形ではトイレと反対側の扉がそれぞれ塞がれたため、各車両とも片側1箇所の扉のみが出入口として使用されました。スロフ12形の両端部貫通扉には、団体名などを表示するためのヘッドマークが取り付けられました。

一方、編成に組み込まれた「サロン佐渡」（オロ12 706）は、欧風の内装と大きな側面窓を持つ展望室を備えていました。この車両もオロ12形800番台と同様に、トイレと反対側の乗降扉が塞がれています。側面窓は全て固定窓に変更され、外観上の特徴として窓の下に帯が1本追加されました。

最晩年と引退

長年にわたり新潟地区の団体輸送を担ってきた「お座敷列車」ですが、時代の流れとともにその役目を終える時が近づきました。2001年（平成13年）、編成のうち「サロン佐渡」（オロ12 706）を除く7両が、今後の活用を見据えて車両の用途が普通車へと変更されました。これに伴い、車両形式記号が「ロ」（グリーン車）から「ハ」（普通車）に改められ、車両番号には1000が加えられました（例：スロフ12 805 → スハフ12 1805）。用途変更の対象外となった「サロン佐渡」（オロ12 706）は同年中に廃車されました。

普通車化された7両も、その後の活躍は長くありませんでした。2002年（平成14年）2月3日に行われたさよなら運転を最後に運用を終了し、全車両が廃車・解体され、新潟地区の「お座敷列車」は姿を消しました。約21年間にわたり、多くの人々に特別な旅の思い出を提供したこの車両は、国鉄・JRにおけるジョイフルトレインの一つの歴史を彩る存在でした。

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