お座敷小唄

お座敷小唄

「お座敷小唄」は、1964年に和田弘とマヒナスターズ、松尾和子が歌い大ヒットした楽曲です。この曲は、昭和の歌謡史に残る名曲として、今もなお多くの人に親しまれています。

誕生と大ヒット

1964年2月か3月末、和田弘とマヒナスターズが広島に巡業に行った際、和田弘が広島市内のスナックでホステスと客が歌っていた曲を耳にしたことがきっかけでした。この曲を元に、和田は松平直樹、寺岡真三と協力し、明るいドドンパ調のアレンジを施しました。歌詞の一部を修正し、松尾和子を加えてレコーディングしたものが、「お座敷小唄」として発売されました。

発売されると、東京オリンピック開催の時期と重なり、たちまち大ヒットとなりました。レコードは1964年中に150万枚を売り上げ、翌1965年までに累計250万枚を記録。当時のレコード売上記録を塗り替えるほどの社会現象となりました。発売元の日本ビクターは「レコード業界空前の大ヒット」と豪語するほどでした。

歌詞と音楽

一番の歌詞は「富士の高嶺に降る雪も 京都先斗町に降る雪も 雪に変わりはないじゃなし 溶けて流れりゃみな同じ」ですが、和田が最初に聞いた歌詞は「雪に変わりが有るじゃなし」でした。しかし、メロディーに乗せやすいという理由で「ないじゃなし」に改訂しました。

この歌詞に対しては、「意味不明」「誤用だ」といった批判も寄せられました。しかし、制作者側は歌詞の論理よりも、曲のムードを重視したことが、ヒットの要因の一つと言えるでしょう。歌詞は七五調で歌いやすく、即興で替え歌も作りやすいという点も、大衆に受け入れられた理由と考えられます。

社会現象

「お座敷小唄」の大ヒットは、当時の社会に様々な影響を与えました。不況の時代に、この曲の持つナンセンスな明るさが、人々の心を捉えたと言われています。また、歌詞の内容が、日々の生活の中で鬱屈とした感情を抱える人々の心に響き、共感を呼んだという分析もあります。この曲は、酒場だけでなく、家庭にも浸透し、幅広い世代に愛される歌となりました。

競作と訴訟

「お座敷小唄」の大ヒットを受けて、複数のレコード会社が類似の楽曲を発売しました。久美悦子の「裏町小唄」、こまどり姉妹の「祇園エレジー」などがその例です。しかし、「お座敷小唄」ほどのヒットには至りませんでした。

また、この曲の作者を名乗る人物が複数現れ、訴訟問題に発展しました。最終的には、埼玉県草加市の人物と広島市の人物の請求は棄却されましたが、山梨県の詩人・小俣八郎の作った「吉田芸者小唄」が歌詞の原型であると認められました。

三味線ブーム

「風が吹けば桶屋が儲かる」の例えのように、「お座敷小唄」の大ヒットは、思わぬ方面にも影響を及ぼしました。飲み屋でこの曲を歌う際に、三味線がないと盛り上がらないという理由から、三味線の需要が急増したのです。その結果、三味線の皮の材料となる猫の皮の需要も高まり、猫の捕獲業者が多忙を極めるという現象も起きました。

続お座敷小唄

1965年には、「お座敷小唄」の続編として「続お座敷小唄」が発売されました。前作と同様に、和田弘とマヒナスターズ、松尾和子が歌い、親しみやすいメロディーと歌詞で人気を博しました。

まとめ

「お座敷小唄」は、昭和の歌謡史に残る大ヒット曲であり、その音楽性や歌詞、そして社会現象としての側面など、様々な角度から語ることができます。この曲は、時代を超えて、多くの人々の心に響き続けるでしょう。

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