かさぶた式部考

かさぶた式部考

『かさぶた式部考』は、著名な作家秋元松代によって創作された演劇作品で、宮崎県に伝わる和泉式部に関する伝説からインスピレーションを得ています。この作品は、初めてテレビドラマ『海より深き 〜かさぶた式部考〜』として1965年に放送され、その後、戯曲として再構成される形で上演されました。また、映画化もされ、「式部物語」というタイトルで公開されています。

あらすじ

物語は、炭坑での事故によって精神を病んだ青年、大友豊市を中心に展開します。彼の母・伊佐とその妻・てるえは、彼が回復することを願い、献身的に支え続けますが、なかなか状態は改善しません。そんな中、豊市の前に和泉協会の巡礼団が現れます。そのリーダーである尼僧・智修尼に魅了された豊市は、彼女の信仰活動に参加する道を選びます。このように、信仰と人間関係が豊市の心の回復に向けた大きな要素として描かれています。

テレビドラマ

『海より深き 〜かさぶた式部考〜』は、1965年11月21日にRKB毎日放送が制作し、TBS系列で放送されました。この作品は、文部省芸術祭テレビドラマ部門で芸術祭賞を受賞し、技術賞も獲得しています。その後、同年12月に再放送されたほか、現在は横浜の放送ライブラリーで視聴可能です。

演出は久野浩平が手掛け、作は秋元松代、音楽には佐藤慶次郎が参加しています。主要キャストには大友伊佐役の北林谷栄、大友豊市役の小林昭二、大友てるえ役の阪口美奈子、智修尼役の南田洋子が含まれています。

戯曲版

テレビドラマの脚本を基に、1969年に秋元松代によって戯曲『かさぶた式部考』が執筆されました。この戯曲は、文藝誌に発表され、同年に単行本として出版されています。この後、さまざまな劇団によって再演され、特に民藝では、テレビドラマ版に出演していた北林谷栄が主演を務めました。また、1970年に秋元はこの戯曲により毎日芸術賞を受賞しています。

上演にあたっては、改訂が重ねられており、作品は『常陸坊海尊・かさぶた式部考』や『秋元松代全集』に収録されていますが、2014年時点では書店での入手は難しい状況でした。

公演は何度も行われ、1969年には劇団演劇座、1973年には劇団民藝、そして2014年には兵庫県立ピッコロ劇団によって上演されました。

映画化

1990年には、映画『式部物語』として公開され、モントリオール世界映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞しました。また、第14回日本アカデミー賞では最優秀美術賞と優秀助演女優賞など多くの賞にノミネートされました。現在、映像としても鑑賞できる形式で販売されています。

まとめ

『かさぶた式部考』は、伝説や人間関係を掘り下げた深い内容を持つ作品で、テレビドラマ、戯曲、映画と多様な形で世に出てきたことからも、評価の高さが伺えます。また、この作品を通じて、秋元松代の独自の感性と表現力が広く知られるようになりました。

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