かなかんぶつ

かなかんぶつについて

かなかんぶつは、山梨県の伝統的な郷土玩具であり、特に端午の節句において使われる節供人形です。この玩具は江戸時代後期から明治時代中期にかけて流行し、地域特有の文化を色濃く反映しています。

概要と呼称

かなかんぶつは紙製の張子で作られた武者人形であり、一般的には「おかぶと」という名称でも知られています。さらに「甲斐かなかんぶつ」や単に「面」、「兜面」とも呼ばれることがあります。この人形は男子の健やかな成長や家運の繁栄を願うもので、親しい人々から贈られることが多く、縁側などの目立つ場所に飾られるのが一般的でした。

「かなかんぶつ」という名前の由来にはいくつかの説があります。ひとつは「金兜（かねかぶと）」から転化したという説で、もうひとつは「紙冠物（かみかんぶつ）」が由来であるとする説です。また、上野晴朗という研究者によると「おかぶと」が正しい呼称だと指摘されています。

製作と起源

かなかんぶつの製作方法はかなり手間がかかります。山梨県立図書館の記録映像によると、まず彫刻を施した木型に油を塗り、それに張子紙を貼り付けます。その後、乾燥させてから木型から剥がし、顔の部分に色を塗って仕上げます。一般的には武田信玄を模したデザインが多く見られますが、源氏の武将や伝説上のキャラクターなども表現されています。上野晴朗の調査によれば、22種類のデザインが存在するとされています。

この人形は広く流通しており、西郡地域や河内地方では特に人気があったとされています。製造が行われていた甲府城下町の商工名鑑や、他国との製品に関する訴訟の記録が残っていることから、当時の商業活動とも密接に関係していたことがわかります。

民俗学的背景

かなかんぶつは、かつては外飾りとして用いられ、神を宿らせる役割があったと考えられています。端午の節句は5月5日に行われ、男子の成長を祝う大切な日であり、菖蒲を用いた行事が広まりました。江戸時代には特に「尚武」という概念が強調され、これが兜を飾る文化へと発展していったとつながっています。

消滅の過程

明治時代に入ると、文明開化政策が進行し、山梨県庁は民俗行事の簡素化を進めました。これにより、かなかんぶつをはじめとする伝統行事は次第に衰退していきました。特に、中央線の開通が影響し、都市部の文化が浸透したため、かなかんぶつを飾る風習はほとんど消えてしまいました。

研究史

かなかんぶつに関する記録は歴史的に少なく、江戸時代の文献にも触れられています。大正時代には若尾謹之助による民俗記録にはでてこなかったものの、後の研究で上野晴朗が実物資料を収集し、衰退の理由を深く考察しました。2009年には山梨県立博物館で「消えたおかぶと」という展示が行われ、多くの人々にこの文化の重要性が再認識されました。

このように、かなかんぶつは単なる玩具以上のもので、地域の歴史や文化を語る重要な存在です。再現制作や郷土教育を通じて、これからもその伝統が受け継がれていくことを期待しています。

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