きく6号

きく6号（ETS-VI）について

きく6号、英語名Engineering Test Satellite - VI（ETS-VI）は、日本の宇宙開発事業団（NASDA）が打ち上げた技術試験衛星です。この衛星の主な目的は、2トン級の静止三軸姿勢制御型実用衛星の技術を確立し、将来に向けて大型衛星に必須となるバス系技術を軌道上で実験することでした。また、高度情報化社会や宇宙活動に必要な固定通信や移動体通信技術、衛星間通信技術の開発と実験、さらにはH-IIロケットの性能確認が大きな目標として掲げられていました。

開発背景

1982年に始まった日本電信電話（NTT）のISDN戦略の下で、2トン級静止衛星の需要増加に応じて、きく6号の開発が進められました。当初の計画では、1992年の打ち上げが予定されましたが、H-IIロケットの開発の遅れにより、2年の延期が決定されました。開発は1986年から始まり、この衛星は後に日本とアメリカの衛星調達合意に基づく実験用衛星（CS-4）の運用にも寄与することになりました。

打ち上げと初期運用

きく6号は1994年8月28日、H-IIロケット2号機によって種子島宇宙センターから打ち上げられました。しかし、初期運用ではいくつかの課題がありました。最初のアポジエンジン噴射において、推力が計画の10%にしか達せず、その後も再三の試みにおいて同様の問題が発生しました。この異常を受けて、静止軌道への投入は断念され、運用方針が変更されました。

その結果、衛星は太陽光を利用したエネルギーの確保が難しい楕円軌道に移行し、軌道制御が行われることとなりました。しかし、この調整に伴い、放射線被曝量が増加し、機器の劣化リスクも高まることが懸念されました。

定常運用と研究成果

1994年12月からは、定常運用に移行し、さまざまな実験が計画されました。技術データ取得装置（TEDA）による宇宙環境の測定や、電熱式ヒドラジンスラスタの軌道上実験が行われました。また、通信実験も行われ、地上の模擬衛星局やNASAとの衛星間通信実験など、先進的な通信技術を試す場となりました。それにもかかわらず、1996年1月には太陽電池による電力保障が難しくなる見通しから、定常運用は終了しました。

後期運用と運用終了

定常運用後も様々な試験が続けられましたが、1996年7月には信号が断続的にしか受信できないという問題が発生。異常を解決するための措置も施されましたが、状況は改善されず、最終的に運用は終了しました。運用終了後は、定められた通信実験のすべてを実施することはできませんでしたが、得られた技術的な知見は他のプロジェクトへと引き継がれていきました。

結論

きく6号は日本の衛星通信技術において重要な役割を果たし、ヴァン・アレン帯における放射線強度の新たな知見を見出すなどの成果を上げました。その成果は後に開発される衛星、例えば、かけはしやきらり、きく8号（ETS-VIII）、N-STARなどに活かされることとなります。

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