かけはし

かけはし（COMETS）

かけはし（Communications and Broadcasting Engineering Test Satellite, COMETS）は、日本の宇宙開発事業団（NASDA）によって打ち上げられた通信放送技術衛星です。この衛星は、日本電気がその開発と製造を担当しました。

成立経緯

かけはしの開発は1987年に始まりました。通信総合研究所（CRL）は、次世代の衛星放送技術および移動体衛星通信技術の開発を目指し、複合型技術衛星（BCTS）計画を立ち上げました。最初は、地上試験モデルの開発が行われ、その後1989年にはBCTS計画がNASDAが進める実験用データ中継・追跡衛星（EDRTS）計画と統合されることが決定されました。

その一方で、1980年代の初頭から日本電信電話公社が高機能な実験用衛星CS-4の開発に取り組んでいましたが、アメリカがスーパー301条を適用しようとしたことで計画は大きな問題に直面しました。このため、1990年には日米間で衛星調達に関する合意が成立し、CS-4計画は民間通信衛星のN-STARに分離、EDRTS計画は通信放送技術衛星（COMETS）として再始動しました。

目的

かけはしは、以下の目的のために開発されました。

• - 高度移動体衛星通信技術の実験
• - 衛星間通信技術の実証
• - 高度衛星放送技術の開発
• - 多周波数帯インテグレーション技術の検証
• - 大型静止衛星の高性能化技術の開発

衛星はCRLとの共同開発で、21GHz帯の高度衛星放送システム受信部やKa/ミリ波帯の高度移動体衛星通信システム中継器がCRLによって開発されました。その他のミッション機器や衛星バスはNASDAによって開発され、衛星バスにはきく6号（ETS-VI）で開発された2t級静止衛星バスを高性能化したものが使用されています。

特に注目すべき点は、宇宙実験・観測用のフリーフライヤ（SFU）の成果を基にしたフレキシブルな太陽電池パドル、初の統合推進系、そして世界初のKa（21GHz）帯200W級進行波管電力増幅器（TWTA）およびミリ波（44GHz）帯20W級TWTAの搭載です。

軌道投入と打ち上げ

かけはしは1998年2月21日16時55分に、H-IIロケット5号機によって種子島宇宙センターから発射されました。初期には正常に進行しましたが、衛星が予定通りの軌道に投入されなかったため、低い遠地点高度の1,900kmとなりました。

軌道変更

初期軌道での通信実験は困難であったため、合計7回、アポジエンジン噴射による軌道変更が行われました。最終的に1998年6月10日には準回帰軌道に投入され、実験運用が開始されました。

運用

軌道変更後の6月11日から7月22日にかけて初期機能確認試験が行われ、ミッション機器の機能はほぼ全て正常であることが確認されました。その後、7月23日からは定常段階運用に移行しました。最終的に1999年1月31日に定常運用が終了し、全運用は同年8月6日に完了しました。

成果

かけはしは静止軌道への投入には失敗しましたが、その開発成果は他の衛星に引き継がれています。準回帰軌道での通信・放送実験は、後の準天頂衛星システム構想に大きな影響を及ぼしました。また、衛星間通信技術はこだま（DRTS）に、移動体衛星通信技術はきく8号（ETS-VIII）に、マルチビームアンテナ技術はきずな（WINDS）にそれぞれ引き継がれています。

関連項目

• - 通信衛星
• - 放送衛星
• - 宇宙開発事業団
• - H-IIロケット

外部リンク

• - 通信放送技術衛星「かけはし（COMETS）」
• - 通信放送技術衛星「かけはし」（JAXA宇宙情報センター）
• - H-IIロケット5号機による通信放送技術衛星（COMETS）の打上げ結果の評価について

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