ISDN

ISDN（サービス統合デジタル網）とは

ISDN（Integrated Services Digital Network：サービス統合デジタル網）は、音声、データ、画像など様々な情報をデジタル回線で統合的に扱うための通信網です。1970年代から1980年代にかけて、アナログ通信が主流だった時代に、デジタル技術の発展とともに考案されました。ITU-T（国際電気通信連合 電気通信標準化部門）によって、世界共通のIシリーズ規格として定められています。

ISDNの特徴

デジタル化: 交換機から加入者線まで全てデジタル化されており、高品質な通信が可能です。
多機能: 音声、データ、画像など様々な情報を同一回線で扱うことができます。
回線交換とパケット通信: 回線交換方式による安定した音声通信と、パケット通信による効率的なデータ通信が可能です。
品質保証: 回線交換では通信速度、パケット通信ではQoS（サービスの品質）が保証されています。

音声通信

ISDNでは、0.3～3.4kHzの音声帯域を64kbpsの回線交換で伝送します。VoIPに比べて音声品質が安定しているのが特徴です。音声の符号化方式は、北米と日本ではμ則、その他の国ではA則が用いられています。

データ通信

データ通信では、通信相手を電話番号で特定し、回線交換またはパケット通信を利用します。回線交換では安定した速度が、パケット通信ではQoSが保証されます。

ISDNの歴史

1972年、CCITT（国際電信電話諮問委員会）のジュネーブ総会でISDNの基本概念が発表されました。1977年から国際電気通信連合で検討が開始され、1984年に暫定勧告、1988年に本格勧告が承認されました。1985年には、シンガポールで世界初のIインタフェースによる実環境での試験が開始されました。

ISDNの構成

ISDNは、以下の要素で構成されています。

回線終端装置（DSU/NT1）: 加入者線とISDN機器を接続する装置。
端末制御装置・構内交換機（NT2）: 端末装置間の通信制御や交換を行う装置。
S点インタフェース機器（TE1）: ISDN回線に直接接続できる機器。
ターミナルアダプタ（TA）: アナログ機器などをISDN回線に接続するための変換装置。

S点インタフェース

基本速度インタフェースのS点・T点では、最大8台の端末を接続できるバス配線が使用されます。配線方式には、最大ケーブル長が200m以下の短距離受動バス配線と、500m以下の延長受動バス配線があります。

アナログ電話回線機器など

S点インタフェースを備えた端末機器は少なく、ターミナルアダプタ（TA）を介してアナログ電話機やパソコンなどを接続するのが一般的です。ターミナルアダプタは、ISDN回線からの給電だけでなく、停電時のために乾電池などによるバックアップ電源を備えているものもあります。

参照点

U点: 伝送路インタフェース規定点。
T点: ISDNユーザー網インタフェース規定点。
S点: NT2のインタフェース。
R点: TEのインタフェース。

ISDNの回線構成

ISDNには、BチャネルとDチャネルの2種類のチャネルがあります。

Bチャネル: データ用のチャネルで、64kbpsの速度で2チャネル利用できます。データリンク層のプロトコルはLAPDです。
Dチャネル: 信号・制御用のチャネルで、パケットデータ通信にも利用可能です。速度は16kbpsまたは64kbpsで、データリンク層のプロトコルはPPP、HDLCです。

また、Bチャネルを束ねたHチャネルも定義されています。

H01チャネル: Bチャネルを6個束ねたもの。
H11チャネル: Bチャネルを24個束ねたもの。
H12チャネル: Bチャネルを30個束ねたもの。

インタフェースの種類

ISDNには、基本速度インタフェース（BRI）と一次群速度インタフェース（PRI）の2種類があります。

基本速度インタフェース（BRI）

64kbpsのBチャネルを2つと、16kbpsのDチャネルを1つ備えたインタフェースで、2B+Dと表記されます。SOHOや個人向けの回線として利用されます。加入者線には、アナログ電話回線と同じ2芯ツイストペアケーブルが用いられます。日本では、TCM-ISDN方式が採用されています。

一次群速度インタフェース（PRI）

より多くのチャネルで構成されるインタフェースで、企業やプロバイダ向けの回線として利用されます。構成は地域によって異なり、北米や日本では23B+D、ヨーロッパでは30B+Dとなっています。加入者線には、光ケーブルが用いられることが多く、加入者側で電源を確保する必要があります。

B-ISDNインタフェース

一次群速度インタフェースよりも高速な回線インタフェースですが、安価なIP加入者線サービスの普及により、一般家庭向けの商用サービス化は行われませんでした。

各国のISDN事情

日本

日本でのISDNサービスは「INSネット」と呼ばれています。工事には電気通信設備工事担任者の資格が必要です。電話番号は、通常の市外局番と同じものが割り当てられ、ダイヤルインやi・ナンバーで追加番号を取得できます。

料金は、回線交換方式の場合、接続時間と通信距離に応じて課金されます。パケット通信の場合は、データ量に応じた課金となります。月額基本料金は、アナログ電話回線2回線分より安く設定されています。

アメリカ

アメリカでは、2000年頃までISDNがブロードバンドの定義に含まれていましたが、ADSLやケーブルモデムの普及によりシェアを落としました。

関連技術

INSネット
H.320
ターミナルアダプタ
ダイヤルアップルーター

参考資料

電子情報通信学会 知識ベース ISDN

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