くろしお (潜水艦・初代)

潜水艦「くろしお」の概要と歴史

「くろしお」は、日本の海上自衛隊が運用する通常動力型潜水艦で、公式なローマ字表記は「JDS Kuroshio」となります。この艦艇は米国から貸与されたガトー級潜水艦の一隻で、艦番号はSS-501、またはYAC-18とも呼ばれることがあります。艦名は、日本近海の黒潮に由来しており、過去に存在した艦艇である陽炎型駆逐艦「黒潮」に続く2代目の艦名です。

1. 海上自衛隊の設立とくろしおの導入

1954年、自衛隊が創設されると、当初からシーレーンの保護と対潜作戦を重視して整備が進められました。日本は対潜訓練を行うためにアメリカ海軍から潜水艦の派遣を受けていましたが、次第に独自の訓練艦が必要とされるようになります。そのため、アメリカに潜水艦の貸与を強く要請し、日米艦艇貸与協定の下、ガトー級の「ミンゴ」を受け入れることとなりました。

1954年12月、海上自衛隊の訓練隊が編成され、選抜された隊員たちがアメリカへ渡り、教育・訓練を受けます。その結果、1955年8月15日に「ミンゴ」が正式に日本に引き渡され、「くろしお」という艦名が与えられました。横須賀地方隊に編入後、艦員たちは1ヶ月半の訓練を受けて、10月24日に無事横須賀へ帰還しました。

2. 活躍と改装

「くろしお」は、貸与時点ではモスボール状態であり、シュノーケルやガピー改装が施されていませんでしたが、対潜訓練の目標艦として非常に重要な役割を果たしました。1956年には自衛艦隊に直轄艦として編入され、1958年には新三菱重工で艦橋の改良工事が行われました。この改装によって艦橋が大型化され、艦の特徴が際立つようになりました。

1962年には呉地方隊に編入され、その後新編された第1潜水隊に所属しました。1965年には自衛艦隊の下に新設された第1潜水隊群に再編されましたが、1966年には保管船（YAC-18）に区分変更されました。これにより、「くろしお」は主に教育訓練などに従事しました。

3. 除籍と技術の遺産

「くろしお」は、1970年8月15日に除籍され、米国に返却されました。その後、しばらく空き港に係留された後、1972年には佐世保市のスクラップ業者に売却され、解体されました。しかし、「くろしお」から得られた技術や経験は、以降の日本の潜水艦開発に大いに役立てられました。

4. 文化的影響

「くろしお」は映画や漫画にも登場しました。例えば、映画『潜水艦イ-57降伏せず』や『太平洋の翼』では、旧海軍の潜水艦として描かれました。また、小沢さとるの漫画『サブマリン707』では、主役艦「SS-707うずしお」のモデルにもなっています。これらのメディアへの登場は、潜水艦「くろしお」の名を広め、日本の海軍史の一部として記憶されています。

「くろしお」は、日本の海上自衛隊における重要な歴史的存在であり、潜水艦戦術の向上に寄与しただけでなく、文化的にも多くの影響を残しました。

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