く・せ・に・な・る (アルバム)

郷ひろみ『くせになる』：大人の魅力が光る、珠玉のアルバム

1996年、日本の音楽シーンに新たな息吹を吹き込んだ一枚――それが、郷ひろみの31枚目のオリジナルアルバム『くせになる』です。前作『I miss you〜逢いたくてしかたない〜』からちょうど一年後、1996年7月1日にSONY RECORDSよりリリースされました。

このアルバムは、それまでの郷ひろみの音楽性をさらに深化させ、アダルトな世界観を確立した重要な作品と言えるでしょう。洗練されたサウンドと、郷ひろみの表現力の豊かさが融合し、聴く者を魅了する楽曲がぎっしりと詰まっています。

特に注目すべきは、アルバムのタイトルにもなっている「くせになる」でしょう。シングルカットもされたこの曲は、アルバムバージョンとシングルバージョンでアレンジが異なっており、それぞれの魅力を楽しむことができます。シングルバージョンではキャッチーで軽快なリズムが印象的ですが、アルバムバージョンではより深く、落ち着いたアレンジが施され、郷ひろみの歌声の重厚さが際立ちます。

アルバム全体を通して、バラエティに富んだ楽曲が展開されています。しっとりと聴かせるバラードから、アップテンポで躍動感あふれるナンバーまで、幅広い音楽性を堪能できるでしょう。作詞には夏目純氏や松井五郎氏といったそうそうたるメンバーが参加し、作曲も横山輝一氏、羽田一郎氏、荒木真樹彦氏、都志見隆氏、尾関昌也氏といった実力派が名を連ねています。編曲も林有三氏や山本健司氏など、それぞれの楽曲に最適なアレンジが施されています。

各楽曲の個性も魅力です。「わかっちゃないよな」や「もう・・・だめさ」といった、切ない恋心を歌った楽曲から、「Don't leave you alone」や「爪を噛みたがる JEALOUSY」といった、情熱的なナンバーまで、様々な感情が表現されています。「罪の景色」や「裸の夢」といった、内省的な楽曲も収録されており、郷ひろみの幅広い音楽性を感じることができるでしょう。「甘い束縛」や「こんなに好きなのに」といった、甘く切ないラブソングも聴きどころです。「どんなに君がはなれていたって」や「いつもそばに君がいた」といった、聴く者の心に深く響くバラードも収録されています。

さらに、このアルバムには数々のタイアップが付けられています。トリンプ、朝日生命保険、いすゞ自動車といった企業のCMソングとして使用された楽曲や、TBS系列愛の劇場枠ドラマ『ママは大ピンチ!!』の主題歌など、様々な場面で聴くことができた楽曲が収録されています。ロレックス専門店『エバンス青山店』のCMソングにも起用された楽曲もあり、アルバムの多様性を示しています。

『くせになる』は、郷ひろみの音楽キャリアにおいて重要な位置を占める作品です。彼の音楽性を深く理解する上で、必聴の一枚と言えるでしょう。ジャケット写真からも漂う、独特の雰囲気と郷ひろみの魅力が凝縮された、まさに「くせになる」アルバムです。ジャケットデザインにも注目し、郷ひろみの艶やかな世界観をじっくりと堪能してください。

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