けがき

けがきとは

けがき（罫書、罫書き）とは、製造業における重要な工程の一つで、設計図に基づいて材料（ワーク）に加工位置を写し取る作業です。この工程は、実際の加工作業を開始する前の準備段階として、製品の精度を左右する重要な役割を果たします。

「罫書き」という言葉から直線を引くイメージがあるかもしれませんが、実際にはコンパスによる円の描画や、センターポンチによる点の刻印も含まれます。つまり、設計図に示されたあらゆる形状や位置を材料に正確に再現する作業全般を指します。

けがきで使われる道具

けがき作業には、さまざまな道具が用いられます。以下に主な道具とその用途を説明します。

精度を支える基盤

定盤: 水平精度が非常に高い加工台で、精密なけがき作業を行うための基盤となります。
アングルプレート、万力: ワークを固定し、けがき作業中のずれを防ぎ、精度を向上させます。

線を引く道具

けがき針: 金属表面に傷をつけて線を引くための道具です。紙における鉛筆やペンのような役割をします。
トースカン: 一定の高さで線を引くための道具で、台座に沿ってけがき針を移動させます。
ハイトゲージ: トースカンに測定機能を追加したもので、より正確な高さでのけがきが可能です。ダイヤルゲージや副尺（バーニヤ）を備えています。
ケガキ剤: ケガキ針の傷跡を見やすくするための塗料で、インキや塗料として使用します。

角度や形状を写す道具

型取りゲージ: 複雑な形状を写し取るための道具です。
分度器: 角度を測るために使用します。特に、アーム付きのプロトラクターがよく用いられます。
スコヤ: 直角を出すための道具で、「直角定規」とも呼ばれます。
コンビネーションスコヤ: スライド式のスコヤが付いた定規で、一定幅の平行線を引く際にも役立ちます。

点を打つ道具

ポンチ: ドリル穴の位置決めや、基準となる点を示すために使用します。
センタポンチ: ドリル先端を当てるための凹みをつけます。
目打ちポンチ（プリックポンチ）: より鋭い凹みをつけ、精密な位置決めを可能にします。
オートポンチ: ハンマーを使わず、押し込むだけでポンチ作業ができる便利な道具です。

寸法を測る道具

* ノギス: 幅、厚み、内径、外径などを正確に測定するための道具です。

各分野におけるけがき

けがきは、それぞれの分野で異なる方法や道具が用いられます。

金属加工

金属加工では、前述したような専門的な道具が使用されます。正確な寸法を材料に転写し、精密な加工を行うために、これらの道具は欠かせません。

溶接

溶接作業では、そこまで厳しい誤差管理が求められない場合、センターポンチ、ハンマー、金尺、巻き尺、チョークなどが用いられます。この場合のチョークは、滑石を棒状にカットした石筆で、黒皮と呼ばれる表面が暗色の圧延鋼板や形鋼へのけがきに適しています。石筆は、一般的なチョークに比べて硬く、熱にも強いのが特徴です。

木工

木工におけるけがきは「墨付け」とも呼ばれます。かつては墨差しや墨壺を用いて墨で線を引いていましたが、現在では鉛筆やシャープペンシルも使用されます。より正確な線を引く場合には、罫引と呼ばれる刃物が用いられます。

まとめ

けがきは、ものづくりにおける最初の重要なステップであり、製品の精度を決定づける重要な工程です。金属、木工、溶接など、各分野で使われる道具や方法は異なりますが、正確な加工のための基盤を作るという点では共通しています。けがき作業の精度を高めることは、結果として製品全体の品質向上につながると言えるでしょう。

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