ここは東京六本木

『ここは東京六本木』は、1970年（昭和45年）6月に世に送り出された、歌手・原みつると彼が率いるグループ「エリートメン」の記念すべきデビューシングルであり、またそのA面に収められた楽曲のタイトルです。

このシングルをリリースした「原みつる」とは、シンガーソングライターとしても活動した平田満の別名義です。平田満は、グループ結成に先立つ1968年（昭和43年）には、テイチクレコードからリリースされた木立じゅんのシングル『484のブルース』の表題曲で作詞・作曲を手がけるなど、作家としての実績もありました。1970年に彼が新たに結成した四人編成のグループが「原みつるとエリートメン」であり、本作が彼らにとってレコードデビュー作となりました。

このデビューシングルは、当時の日本コロムビアから発表されました。リリースナンバーはLL-10140 -Jが付与され、当時の定価は400円でした。

シングルには二つの楽曲が収録されています。A面にはシングルのタイトルと同じ『ここは東京六本木』が配されました。この楽曲は、大平秀夫が作曲、高尾一利が作詞を手がけ、池田孝が編曲を担当しています。特に『ここは東京六本木』は「和製ボッサ」とも称される独特の音楽性を持ち、その収録時間は2分50秒です。一方、B面には『酔わせて』が収録され、こちらは作詞・作曲を大平秀夫、編曲を池田孝が担当し、収録時間は3分38秒です。どちらの楽曲も、音楽出版社については不詳とされています。

このシングルの制作には、グループのメンバーも深く関わっています。例えば、作曲・作詞（B面曲）を手がけた大平秀夫は、このグループに「大平次郎」という名義で参加していました。また、「小出四郎」という名義でメンバーであった小出誠も重要な存在です。後に大平秀夫と小出誠は、ラテン音楽のデュオ「ドス・アセス」を結成し、音楽活動を続けています。楽曲の編曲を一手に引き受けた池田孝は、当時の日本コロムビアで活躍していた専属アレンジャーです。なお、『ここは東京六本木』を作詞した高尾一利と作曲した大平秀夫は、いずれも当時のJASRACに信託する作家ではなかったと記録されています。

「原みつるとエリートメン」としての活動は残念ながら短期間に終わります。本シングルのリリースから約1年後の1971年（昭和46年）7月、原みつること平田満はキングレコードへと移籍し、新たなグループ「原みつるとシャネル・ファイブ」を結成して再デビューを果たしました。しかし、この「シャネル・ファイブ」には、「エリートメン」のメンバーは引き継がれていませんでした。

本作は、当時のポピュラー音楽の一端を担う作品としてリリースされましたが、その音源は現在では希少となっています。2010年9月時点の情報によると、このシングルに収録された楽曲は、CD化などのデジタル形態ではリリースされていないようです。このアナログレコード以外での入手は困難な状況にあると考えられます。

『ここは東京六本木』は、原みつる（平田満）のグループ活動における最初の記録であり、和製ボッサというユニークな音楽性を持つ楽曲を収めた作品として、当時の音楽シーンにおける多様な試みを示すものと言えるでしょう。また、参加ミュージシャンたちのその後のキャリアにも繋がる点でも興味深い一枚です。

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