484のブルース

484のブルース

『484のブルース』は、日本の歌謡曲史において、その異色のテーマと社会的影響で知られる楽曲です。オリジナルは1968年（昭和43年）に歌手・木立じゅんによって発表されました。この曲の誕生には、数々の著名な音楽家たちが関わっています。

楽曲の作詞・作曲は平田満が手がけましたが、テイチクレコードで石原裕次郎をはじめ多くの歌手に詞を提供していた大御所作詞家、高月ことば（後に東芝レコードの専属作詞家第1号となる松山恵子なども担当）が補作詞を、そして『星屑のブルース』など石原裕次郎のヒット曲を多数生み出し、後に日本レコード大賞功労賞を受賞する大物作曲家、野崎眞一が補作曲として参加しました。さらに、石原裕次郎の『夜霧よ今夜も有難う』などを手がけた山倉たかしが編曲を担当し、木立じゅんの歌唱によって世に送り出されました。当時のリリースナンバーはSN-677、定価は370円でした。

この楽曲最大の特色は、そのタイトルと歌詞内容にあります。タイトルにある「484」という数字は、当時札幌刑務所が存在した「苗穂町484番地」（現在の札幌市東区東苗穂2丁目1-5にあたる地域）の番地を指しています。歌詞で描かれているのは、札幌で語り継がれる伝説的な無頼漢、「雁来（かりき）のバラ」と呼ばれた荏原哲夫（1924年 - 1956年）の生涯です。

『484のブルース』は一定のヒットを記録しましたが、そのアウトローな内容から、高倉健が歌った『網走番外地』と同様に、日本民間放送連盟が設けていた要注意歌謡曲指定制度において、放送禁止となるAランク指定を受けてしまいました。

木立じゅん版シングルのカップリング曲は『無情の薔薇』でした。この曲も、テイチクで石原裕次郎の楽曲に多くの詞を提供した作詞家・猪又良と、作曲家・上原賢六のコンビによる作品で、こちらも『484のブルース』と同様に荏原哲夫の生き様をテーマにしていました。編曲は塩瀬重雄が担当しています。

楽曲の作詞・作曲者である平田満は、その後「原みつる」の名義で音楽活動を続けました。1969年には「原みつるとエリートメン」として日本コロムビアから、1971年にはキングレコードへ移籍し「原みつるとシャネル・ファイブ」としてレコードを発表。そして1976年には『愛の狩人』でソロ歌手としてもデビューし、10万枚を超えるスマッシュヒットを飛ばしました。その後しばらく新曲のリリース機会がありませんでしたが、1979年（昭和54年）5月5日、自身が11年前に手がけた『484のブルース』をセルフカバーしたシングルをリリースしました。この平田版のリリースナンバーはGK-288、定価は600円でした。カップリング曲は『番外地の春』で、網走市在住の画家・柴幸夫が作詞を、音楽家の黒木靖男が作曲を、高田弘が編曲を担当しました。

また、『484のブルース』には別バージョンも存在します。1971年（昭和46年）6月、歌手の大友和也がリリースしたシングル『ふるさとは宗谷の果てに』のB面には、『すすきの夜のブルース』という楽曲が収録されました。これは『484のブルース』を改題し、歌詞の一部を変更したもので、「雁来町」という地名が「すすきの」に置き換えられています。このバージョンはテイチクレコードが製作し、ユニオンレコードから発売されました。編曲は池田孝が手がけています。

『484のブルース』は、後年になって他の歌手にもカバーされています。俳優の松方弘樹もこの楽曲をカバーしており、2004年にリリースされたアルバムに収録されています。さらに、2009年（平成21年）には歌手の清水節子もアルバム「おとこ・唄」でこの曲をカバーしました。

現在の音源入手状況については、木立じゅん版と松方弘樹版の『484のブルース』はCD化されており、比較的手に入りやすい状況です。しかし、作詞作曲者である平田満自身が歌ったセルフカバー版の音源は、現在のところCD化されていないようです。同様に、木立版シングルのカップリング曲『無情の薔薇』、平田版シングルのカップリング曲『番外地の春』もCD化は確認されていません。

この楽曲の持つ独特の世界観は、音楽以外のメディアでも取り上げられています。2004年（平成16年）には、GPミュージアムソフトよりオリジナルビデオ映画『北海水滸伝484のブルース 伝説・枯木のバラ』が製作・発売されました。また、大衆演劇の世界でも、真芸座の座長・片岡梅之助が『484のブルース』を演目の題材として扱っています。

『484のブルース』は、単なる流行歌としてだけでなく、その社会的背景やアウトロー文化との関連性から、日本のポピュラー音楽史において特異な位置を占める楽曲と言えるでしょう。

収録曲

木立じゅん版 (1968年)
484のブルース
作詞・作曲: 平田満
補詞: 高月ことば
補曲: 野崎眞一
編曲: 山倉たかし
出版権: 全音楽譜出版社
無情の薔薇
作詞: 猪又良
作曲: 上原賢六
編曲: 塩瀬重雄
出版権: 全音楽譜出版社

平田満版 (1979年)
484のブルース
作詞・作曲: 平田満
補詞: 高月ことば
補曲: 野崎眞一
編曲: 八木正生
コーラス: シンガースリー
演奏: 八木正生オールスターズ
出版権: 全音楽譜出版社
番外地の春
作詞: 柴幸夫
作曲: 黒木靖男
編曲: 高田弘
演奏: キングオーケストラ
出版権: 全音楽譜出版社

大友和也版シングル『ふるさとは宗谷の果てに』B面 (1971年)
すすきの夜のブルース
作詞・作曲: 平田満
補詞: 高月ことば
補曲: 野崎眞一
編曲: 池田孝
演奏時間: 4分01秒
製作: テイチクレコード
* 発売: ユニオンレコード

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