こと座ベータ星

こと座β星 (Beta Lyrae) の概要

こと座β星（ことざベータせい、Beta Lyrae）は、こと座に存在する3等星の恒星です。星座内での位置やその特性は、天文学者やアマチュア天文家の注目を集めています。特にその変光特性や連星系としての性質が研究の対象となっています。

物理的特徴

こと座β星は、青白い巨星と準巨星からなる連星系です。この二つの星は非常に近接しており、互いに重力で引き寄せられ、形状が楕円に歪んで見えるのが特徴です。さらに、この連星系には、第3の星が存在しており、これは約45.7秒の距離で見ることができます。スペクトル分類はB7Vで、眼視等級は7.2、光度は太陽の約80倍に相当します。したがって、この連星系は、分光連星として4.34日の周期で活動しています。

また、もう一つの伴星β星Fも存在しており、86秒の距離で観測可能です。この星の眼視等級は9.9で、光度も太陽の7倍ほどと見積もられています。

こと座β型変光星

こと座β星は、食変光星の一種であり、特にその変光特性が他の星々とは異なります。この星の変光は、急激な明るさの変化ではなく、連続的に変動します。これは、星の楕円形によるものです。一方の星からガスがもう一方の星へ流入する現象も見られ、これは双方の星が非常に近接していることに起因しています。新しい物質の流入速度はおよそ300km/sとされており、主に高温のガスが流れ込んでいます。

こと座β星では、大きい星が物質を失っていく現象が確認されており、約13,000Kの主星が8,000Kの伴星を周回しています。この星の変光は、目の良い観察者であれば、暗い場所で容易に観測できるため、1784年にイギリスのアマチュア天文学者ジョン・グッドリックによって発見されました。ただし、アルゴル型の変光星と異なり、近接する二つの星が分離しづらいため、変光のメカニズムの解明は難航しました。こと座β星は約12.9日周期で変光し、その明るさは+3.25等級から+4.36等級の間で変動します。

電波星としての特性

こと座β星は、1971年にアメリカ国立電波天文台によって電波星として認識されました。この現象も、星同士での物質移動によって引き起こされていると考えられています。連星の一方から流出したガスが主星の周囲に降着円盤を形成し、円盤に蓄積されたガスが主星に落下する際に電磁波を放出します。電磁波は降着円盤の回転面に対して90度の角度で放射され、一方の伴星は太陽の質量の約3倍であり、ロッシュ・ローブを満たしていることでガスを主星に奪われています。この伴星は、毎年太陽質量の約2×10^-5倍の質量を失っていくことが分かっています。

名前の由来

こと座β星の固有名、「シェリアク (Sheliak)」は、アラビア語の「琴」を意味する「al-salbāq」に由来しています。この名称は、ギリシャ語の「σαμβυκη」に基づく外来語であり、2016年8月21日に国際天文学連合（IAU）によって正式に承認されました。

このように、こと座β星はその観測的特性から多くの天文学者の研究対象となり、魅力的な天体の一つです。

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