こぬか雨

シュガー・ベイブ「こぬか雨」：多様なアレンジと歴史を彩る名曲

「こぬか雨」は、日本の音楽史に名を刻むシュガー・ベイブの楽曲です。伊藤銀次と山下達郎の共作として知られ、その誕生から現在に至るまで、数々のバージョンが制作・発表され、幅広い音楽ファンを魅了し続けています。

シュガー・ベイブ時代：初期バージョンとライブ演奏

この楽曲の原点は、伊藤銀次がかつて所属していたバンド「ごまのはえ」時代にまで遡ります。ガロの「美しすぎて」に影響を受けて作曲された楽曲は、伊藤銀次がシュガー・ベイブに加入後、山下達郎と共に歌詞を練り上げ、現在の形に完成しました。特に伊藤銀次は“ここにはそぼ降るこぬか雨 ここにはスコールさえもない”というフレーズを気に入り、欧陽菲菲の「雨の御堂筋」から着想を得たと語っています。

シュガー・ベイブではライブで頻繁に演奏され、イントロ、間奏、コーダのギターソロは伊藤銀次と村松邦男によるツインリードが特徴でした。伊藤銀次の脱退後は山下達郎がギターソロを引き継ぎました。アルバム『SONGS』には収録されませんでしたが、2015年の『SONGS -40th Anniversary Ultimate Edition-』に、1976年4月1日荻窪ロフトでのライブ音源がボーナス・トラックとして収録され、貴重な当時の演奏を聴くことができます。さらに、山下達郎は1994年のコンサート『TATSURO YAMASHITA Sings SUGAR BABE』で「こぬか雨」を演奏し、そのライブ音源はシングル「愛の灯ともしび〜STAND IN THE LIGHT」のカップリング、そしてアルバム『Ray Of Hope』初回限定盤のボーナスCDに収録されました。

伊藤銀次によるセルフカバーと多様なアレンジ

1977年、伊藤銀次はソロデビューアルバム『DEADLY DRIVE』に「こぬか雨」を収録しました。このバージョンでは伊藤銀次が歌詞を全面的に書き換え、新たな解釈を加えています。その後も、「こぬか雨」は様々なアレンジで発表されています。伊藤銀次のプロデビュー40周年記念ベストアルバム『ゴールデン☆ベスト 伊藤銀次 〜40th Anniversary Edition〜』、ミニアルバム『I STAND ALONE VOL.4』でのアコースティックギター弾き語りバージョン、そして『DEADLY DRIVE 40th Anniversary Deluxe Edition』に収録されたアコースティックライブバージョンなど、彼の音楽性と歩みを映し出すかのように多様なアレンジが展開されています。さらに、2019年のアルバム『RAINBOW CHASER』にはBillboard Live TOKYOでのライブバージョンが収録され、2017年には「Sony Music Shop」専売商品としてリリースされたCD4枚組ボックスセット『POP FILE 1972-2017』に「ごまのはえ」時代の初期音源「こぬか雨 (Fussa Demo)」も収録されています。

各バージョンのレコーディングメンバー

それぞれのバージョンで、参加ミュージシャンは異なります。シュガー・ベイブ版では上原裕（ドラムス）、寺尾次郎（ベース）、村松邦男（ギター、コーラス）、大貫妙子（ピアノ、コーラス）、山下達郎（ボーカル、ギター）が参加。1976年の荻窪ロフトライブでは、山下達郎を筆頭に、島村英二、伊藤広規、佐橋佳幸、難波弘之、重実徹、高尾“Candee”N、佐々木久美、楠瀬誠志郎らが演奏に参加しました。1994年の中野サンプラザでのライブは、山下達郎が当時のアレンジで演奏したバージョンです。伊藤銀次のセルフカバー版では、上原裕、田中章弘、坂本龍一、斉藤ノブ、大貫妙子らが参加し、坂本龍一がホーンとストリングスのアレンジ、大貫妙子がコーラスアレンジを担当しました。

まとめ

「こぬか雨」は、時代を超えて愛され続ける名曲です。シュガー・ベイブ、そして伊藤銀次、山下達郎それぞれの解釈を通して、その魅力はさらに深まっています。それぞれのバージョンを聴き比べることで、楽曲の多様性と、時代とともに変化していく音楽表現の一端に触れることができます。 楽曲が持つ普遍的な魅力と、アーティストたちの創造性が生み出した多彩なアレンジの数々は、これからも多くのリスナーを魅了し続けることでしょう。

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