さがみ (補給艦)

「さがみ」 - 海上自衛隊の補給艦

「さがみ」（ローマ字：JS Sagami、AOE-421）は、海上自衛隊に属する補給艦で、その名前は相模湖に由来しています。唯一の同型艦を持たない「さがみ」は、洋上補給能力を大幅に向上させた艦艇です。

船の来歴

「さがみ」は、昭和35年度計画で海上自衛隊が初めて建造した給油艦「はまな」の運用から得た経験を踏まえて、補給能力を強化するために計画されました。「はまな」は1962年に就役し、その後の洋上補給訓練を通じて、艦隊の補給技術を飛躍的に向上させました。しかし、単艦では補給任務に限界があり、さらなる艦艇の必要性が高まっていました。

設計の特長

「さがみ」の船体は、前艦と異なり船首楼型に設計されています。艦橋構造は機械室と一体化しており、より効率的な作業が可能です。艦橋の直下には機械室、そしてボイラー室が配置されています。主甲板は艦尾まで続き、艦橋構造前には作業甲板、後方にはヘリコプター甲板が設けられています。この設計により、艦艇の運用効率が向上しました。

機関と速力

「さがみ」は、「はまな」と比べて速力が大幅に向上しており、22ノットに達します。この高速性は、アメリカ海軍の支援艦部隊の強化に倣ったものです。主機関として搭載された三菱重工工業製のディーゼルエンジンは、当初護衛艦向けに開発されましたが、特に高出力である一方、他艦への搭載はなされず、「さがみ」のみの特異な存在となりました。

補給機能の進化

補給機能は「はまな」と比べて大幅に強化され、弾薬の洋上移送にも対応可能です。補給作業を統括する荷扱所は主甲板の中央に設けられましたが、荒天時には波の影響を受けることもあり、操作難度が増すことが懸念されています。補給用門型ポストを3基配置し、液体貨物や航空燃料の急速補給を可能にしました。

物資格納と弾薬格納

「さがみ」は、弾薬の洋上補給に初めて対応した艦として、特に注目されています。内部構造は、貨油タンクと弾薬格納所が分割されています。搭載能力は、艦船用燃料が約4,500キロリットル、航空燃料が約220キロリットル、さらには約40,000食分の糧食が見込まれています。このため、弾薬補給は大きな作業負担となりました。

自衛機能

自衛機能に関しては、「さがみ」は非武装ですが、Cバンドの対水上捜索レーダーを装備し、長距離探知が可能です。さらに、将来的には自衛用の機銃装備が検討されていましたが、実現には至りませんでした。

艦歴

「さがみ」は、1979年に就役し、自衛艦隊に編入されました。高い補給能力を評価され、その後の「とわだ型」補給艦の開発の基盤ともなりました。1988年には機関室火災に襲われるなどの厳しい運用もありましたが、無事に帰港を果たすことができました。最終的には、2005年に除籍されるまでの約30年間、海上自衛隊に貢献しました。

「さがみ」は、航海中に602,903浬を記録し、4,132回の給油を行い、436,296キロリットルの燃料を供給するという素晴らしい実績を残しました。この艦は、自衛隊における重要な存在として、多くの経験を積み重ねてきました。

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