さだめ川

概要

「さだめ川」（さだめがわ）は、日本の歌手であるちあきなおみが1975年7月25日にリリースしたシングルレコードです。

この楽曲は、それまで「四つのお願い」に代表されるアイドル的な楽曲や、「喝采」のようなドラマチックな歌謡曲で知られていたちあきなおみが、キャリアの中で初めて本格的な演歌路線に取り組んだ意欲作として位置づけられています。彼女の多岐にわたる表現力を示す一曲となりました。

楽曲制作と背景

「さだめ川」の作詞を手がけたのは、演歌界を代表する作詞家の一人、石本美由起です。そして、作曲および編曲は、日本の歌謡界に多大な貢献をした船村徹が担当しました。船村徹がちあきなおみの楽曲の作曲を担当したのは、この「さだめ川」が初めてのことです。その後、船村はちあきの多くの楽曲を手がけることとなり、彼女の特集番組などでもたびたびその関係性や歌唱力について語っています。

ちあきなおみの演歌への挑戦には、前作「恋慕夜曲」以降、彼女のプロデューサーを務めることになった中村一好（後に歌手・都はるみの公私にわたるパートナーとしても知られる人物）の影響があったとされています。

メディアでの展開

「さだめ川」は、その年の音楽シーンにおいて注目を集めました。ちあきなおみは、1975年12月31日に放送された「第26回NHK紅白歌合戦」において、本楽曲を披露しました。この紅白歌合戦のステージでは、作曲者である船村徹自身がギター演奏で参加するという、印象的な共演が実現しました。この共演は、多くの視聴者の記憶に残るパフォーマンスとなりました。

販売に関するエピソード

この楽曲のリリースを巡るユニークなエピソードが伝えられています。当時の日本コロムビアに在籍していた担当者、飯塚恆雄氏が、ディレクターと共にちあきなおみの楽屋を訪れた際、「さだめ川をレコードとして出せば、10万枚を下回ることはない」と断言し、さらに「もし売れなかったら銀座を逆立ちして歩いてもいい」とまで発言したといいます。結果として、「さだめ川」の売上枚数は、辛うじてではあったものの、宣言通り10万枚を超えるヒットとなりました。このエピソードは、当時の関係者のこの楽曲に対する強い期待と、ちあきなおみの歌手としての実力を物語る逸話として語られています。

収録曲

シングル「さだめ川」には、以下の2曲が収録されています。両曲ともに、作詞は石本美由起、作曲および編曲は船村徹が担当しています。

• - さだめ川 [3:46]
• - 海郷 [3:48]

主なカバー

「さだめ川」は、その楽曲の素晴らしさから、発表後も多くの歌手によってカバーされています。世代やジャンルを超えて歌い継がれていることは、この楽曲が持つ普遍的な魅力の証と言えるでしょう。主なカバーは以下の通りです。

• - 細川たかし（1986年） - 同年の「第37回NHK紅白歌合戦」でも披露されました。
• - 三條正人（1986年） - アルバム『三條正人全曲集』に収録。
• - 石川さゆり（1992年） - アルバム『特選集 石川さゆり/春夏秋秋』に収録。
• - 藤あや子（1993年） - ライブアルバム『ファーストリサイタル〜より艶やかに』に収録。
• - 宮史郎（1998年） - アルバム『酔町情話&ギタームード演歌』に収録。
• - 山内惠介（2001年） - アルバム『女唄・名曲選』に収録。
• - 天童よしみ（2009年） - アルバム『天童節 昭和演歌名曲選 第十六集』に収録。
• - 岩本公水（2012年） - アルバム『岩本公水 ベストセレクション2012』に収録。

楽曲の持つ意味

「さだめ川」は、ちあきなおみのキャリアにおける演歌という新境地を開拓した重要な楽曲です。船村徹との出会い、プロデューサーの意向、そして歌手本人の表現力が見事に結実し、多くの人々に支持される一曲となりました。後に続く数々のカバーからもわかるように、日本の歌謡史において確固たる地位を占める名曲として、現在も多くの音楽ファンに聴き継がれています。

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